第183話 大浴場で困りごとを聞く
そのあとも部屋を見て回った。最大で四人まで泊まれるようである。一人部屋はなかったので、そのときは二人部屋を使うみたいだね。
宿泊費用に関しては妥当なようである。アルフレッド先生もフェロールも特に何も言わなかった。
「あ、ボクが作った家具が置いてありますよ!」
「ミュ」
「本当ですね。他の家具と遜色のない、とてもよいできになってますよ」
「えへへ」
これはなかなかの自信作だったからね。使ってくれる人が喜んでくれるといいな。
宿屋の見学が終わったところで、さっそく宿に泊まるお願いをしておいた。今日の夕ご飯はここの一階にある料理店を利用するつもりだ。どんな料理が出てくるのか、今から楽しみだね。
そうして一通り建物内を見終わったところで、再び外へと出た。外ではまだデニス親方たちが酒盛りをしているみたいだ。さすがはドワーフ。そう思っていたのだが、エルフさんたちも、町の人たちも一緒に酒盛りをしていた。
これはもう、「さすがはノースウエストの町の住人たち」と言った方がいいだろう。おいしいお酒がそろっているからね。しょうがないのかもしれない。
ノースウエストは着実に「お酒の町」になりつつあるようだ。狙い通りではあるけど、他の商品でも有名になりたいところだね。
「デニス親方、ルミ姉さん、ボクたちは今日、ここの宿に泊まることにしたけど、二人はどうする?」
「なんだと!? もちろん俺も泊まるぜ。この建物には俺の手も加えてあるからな。それを堪能するのは義務だぜ。それにこの料理と酒は、一階に入っている料理店の物なんだろう? なら泊まって料理を味わうしかねぇ」
「それならあたしも泊まるッス! 夜はもちろん、完成祝賀会の二次会ッスよね?」
「まあ、うん、そうだね。そうするように話しておくよ」
そのあとは、一緒にお酒を飲んでいた人たちが「俺も、俺も!」と騒ぎ始めた。どうやら初日は客室が満室になりそうだね。最初の一日からすばらしいスタートを切ることができそうだ。
宿屋の支配人に客室の追加をお願いしてから、そのままボクたちは祝賀会に加わった。
デニス親方たちはお店を見に行かなくてもいいのかな? 色んな種類のお酒が並んでいたから、きっと気に入ると思うんだよね。
そうしてボクたちはそのまま宿屋で一泊することになった。もちろん夜も大盛況だった。食べ物や飲み物が心配になってきたけど、こうなるだろうと予測していたエルフさんたちがしっかりと用意してくれていた。さすがエルフさんたち。
お風呂はもちろん大浴場を利用した。久しぶりにここを利用したけど、こうして町の人たちと一緒にお風呂に入るのもいいね。フェロール的にはあまり推奨できないみたいだけど。
なんと言っても、防備が手薄になってしまうからね。屋敷ではないだけに、人もどんどん入れ替わっているし、武器を持ち込むことはできない。
せっかく町の人たちと気軽に話せる機会なので、何か問題が起きていないか、聞いてみようかな?
「何か困っていることはありませんか?」
「領主様、いつもありがとうございます。領主様が来てから、この場所がどんどん発展していることを感じておりますよ。困ったことですか、そうですね、道がもう少し整っていればと思いますね」
「なるほど、道ですか。確かにそうですね。貴重な意見をありがとうございます」
今のノースウエストに敷設されている道は、地面を硬く押し固めたものである。これまでは人しか歩かなかったので、それでもなんとかなったのかもしれない。だけどこれからは馬車や荷車が行き交うことになるからね。そうなると、確かに道の整備が必要だな。
これはいい情報を入手することができたぞ。さっそくアルフレッド先生とデニス親方たちに相談だな。石畳の道は無理でも、魔法でガチガチに固めた、平らな道くらいならなんとかなるかもしれない。
せっかくなら、隣町までの道もきれいにしたいところだね。今は人の通りがほとんどないので、細い一本道が続いているだけだ。せめて、馬車がすれ違えるくらいの道幅にしたいところである。
他にも何か困っていることはないかと聞いてみたが、特に気になることはなかった。ちょっと安心。大満足ではないかもしれないけど、そこまで不満もなさそうだね。
お風呂からあがったボクたちは、お風呂あがりのジュースを飲みながら相談を始めた。
「なるほど、道の整備ですか。確かに必要ですね」
「いいじゃねぇか。それをすることで、人族の町らしくなるんだろう? それなら歓迎だぜ」
「ドワーフやエルフたちの住んでいるところでは、大きな道なんて必要なかったみたいだね」
「まあな。どこも歩いてすぐのところにあったからな」
どうやらドワーフやエルフたちは、隣の集落と物をやり取りするようなことはあまりなかったようである。きっとなんでも自分たちで作ることができるから、必要な物は自分たちで作っていたんだろうね。それも必要な数だけ。
他の町とつながることで発展してきた人族のやり方とは大きく違うようである。
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