第178話 エルフ秘伝の調味料
アルフレッド先生とルミ姉さんが共同で作った昼食が運ばれてきた。パンはもちろんエルフパンだ。そしてメインは薫製肉を使ったローストビーフもどき。こちらはルミ姉さんが作ったようで、ドワーフたちの間ではよく作られる、家庭料理だそうである。
郷土料理なのかもしれないね。
「すごくおいしそうです!」
「ミュ!」
「エルフパンに挟んでもおいしいッスよ」
「こちらの調味料はエルフの家庭に伝わる、なかなか作ることができない調味料なのですよ」
少し黄色い色をした、生クリームのような調味料。これ、マヨネーズだ! マヨネーズはすでにあったんだね。
もちろん、マヨネーズをつけて食べることにした。葉物野菜も一緒に食べれば、栄養バランスもいいね。
「少し酸味が利いていて、とてもおいしいです」
「ミュ、ミュ!」
「ミューも気に入ったみたいだね」
「ミュ」
アルフレッド先生はそんなボクたちを見て、うれしそうな顔をしてローストビーフを食べている。そして満足そうな顔をしていた。アルフレッド先生もルミ姉さんの作ったローストビーフを気に入ったみたいだね。
ルミ姉さんとニャーゴさんは、このマヨネーズのような調味料は初めてだったみたいで、ちょっと警戒していた。
だが、ルミ姉さんは愛するアルフレッド先生が作った物だし、ニャーゴさんは好奇心にあらがえなかったようで、結局二人とも食べていた。
「な、これは! すごくおいしいッス。こんなの初めてッス。クセになりそう」
「初めて食べる味ですね。確かにリディル様が言ったように、少し酸味がありますね。ですが、そこまで気になりません。野菜につけて食べると、どんどん食が進みますね」
ルミ姉さんもニャーゴさんも気に入ったようである。そこからは遠慮なくマヨネーズをつけ始めた。
マヨネーズを作るには、卵がたくさん必要なんだよね。なかなか作ることができないことにもうなずける。
でも、これからは牧場で鳥も飼うみたいだから、安定して卵を得ることができるようになると思う。それもあって、アルフレッド先生がこの調味料を作ったんだろうな。
マヨネーズも売りに出せるといいけど、さすがにそこまではまだ難しいかな? 今の状態だと、長くは保存できなさそうだからね。
保存用の容器と、マヨネーズを作る装置を用意すれば問題ないかもしれないけど。
昼食が終わったら、いよいよデザートのアイスの登場だ。待ってました、とばかりにミューがテーブルの上に乗った。
コラ、お行儀が悪いぞ。
そんなミューをイスの上におろしつつ、アイスを固めていた容器のフタを開けた。
「見た目は前回と変わらないみたいッスね」
「確かにそう見えるけど、よく見れば、前のよりも気泡が小さくて、均一になっているのが分かると思うよ」
「うーん、あたしには分からないッスね」
「ミュ」
どうやらルミ姉さんだけでなく、ミューも分からなかったようである。
それならば、さっそく食べてもらおうではないか。食べてみれば、その違いにきっと気がついてくれるはずだ。
ボクがアイスをつぎ分けている間に、ルミ姉さんがお酒を用意し始めた。さすがはドワーフ。どうやら準備は万端のようである。見た目は幼いけど、ルミ姉さんは立派な大人の女性だからね。
「これでよし。ミューもどうぞ」
「ミュ」
「ありがとうございます。それではさっそくいただくとしましょう」
「まずはそのまま食べてみるッス。お酒はそのあとのお楽しみッス」
「見た目は確かに昨日のアイスよりも滑らかになっているような?」
そう言いながら、みんながアイスを食べる。もちろんボクもスプーンを口へと運んだ。
おお、この滑らかな舌触り。やっぱり昨日よりも一味違うようである。泡立て器は偉大だな。やっぱりボクの力では限界があったようである。
「ミュ、ミュ!」
「ミューは気に入ったみたいだね」
「ミュ!」
ミューが器用にスプーンで食べている。どうやらおかわりがあることを察したようである。鋭いな。今回は前回よりも多めに作ったからね。みんなで食べても二回分くらいはおかわりがあるぞ。
「確かに昨日よりも滑らかになっていますね。こんなに違うとは思いませんでした」
「泡立て器を作ったのは正解だったみたいッスね。力もいらず、時間もかけずにアイスを作ることができるようになったッス。それじゃ次はお酒でも試すッス」
「素晴らしい。昨日のアイスも素晴らしかったですが、これはさらにその上を行っていますよ」
みんなの手が止まることなくアイスを食べているね。アルフレッド先生はルミ姉さんからお酒を分けてもらっているみたいだ。気に入ってもらえたのには間違いがなさそうだね。
ニャーゴさんは皿までなめそうな勢いだ。もちろんミューも。
「ミュ」
ミューが空になったお皿をボクの前に押し出した。もう、しょうがないなぁ。
「ミュー、これで最後だからね。冷たい物をたくさん食べすぎると、おなかを壊すことになるからね」
「ミュ」
ちょっと残念そうにしているが、分かってくれたようだ。ボクがアイスを追加したあとは、楽しむようにゆっくりと食べていた。
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