第177話 病気も治せる魔法薬

「本当に大丈夫ッスか、坊ちゃん?」

「ミュ?」

「大丈夫だよ。ボクは自分の作った回復薬を信じているから」

「大丈夫ですよ。ちゃんと効果を発揮しますから」


 ルミ姉さんの心配に苦笑いするニャーゴさん。過保護だよね。ボクもそう思います。


「それじゃ、さっそく……お、すごい! もう治ったよ」

「ミュ、ミュ!」


 回復薬を飲むと、スッと傷口が塞がった。たまった血を拭き取れば、そこには傷一つなくなっていた。

 これが錬金術で作った魔法薬なのか。すごい効果だね。


「こんなにすぐに治るとは思っていませんでした。錬金術ってすごいのですね」

「そうでしょう? 使い方を間違えなければ、錬金術はすごい技術なのですよ」


 笑顔のニャーゴさん。それは言い換えると、使い方を間違えればとんでもないことになるというわけか。ボクも気をつけてニャーゴさんから学ばないといけないな。そしてボクの勝手な思いつきで、錬金術の道具を作らないこと。これは守った方がよさそうだ。


「それにしても、まさか一度で完成させるとは思ってもみませんでした」

「さすがは坊ちゃんッスね。魔道具だけじゃなくて、錬金術にも才能があるだなんて」

「えへへ」


 ほめられちゃったぞ。物作りに関してはそこそこの自信があるからね。最近ではエンジニアだったころの記憶が色々とよみがえりつつあるような気がする。

 他にも木工もできるし、精霊魔法も使えるようになってきている。お城から追放されたときはどうなるかと思ったけど、そのおかげで色んな技術を身につけることができたぞ。


「それでは、次は解毒剤を作ってみましょうか。回復薬よりかは難しいですが、これも作れると便利ですからね」

「よろしくお願いします、ニャーゴ先生!」

「先生ですか、あはは……」


 照れるニャーゴさん。

 解毒剤か。これも回復薬と同じくらい重要な魔法薬だね。でも、ちょっと気になることがあるぞ。


「ニャーゴさん、解毒剤ってどんな毒でも無効化することができるのですか?」

「なんでも無効化するのは難しいですが、数ヶ月で自然治癒できる毒なら、無効化することが可能ですね」

「なるほど。それじゃ、病気はどうなるのですか?」

「もちろん病気も治すことができますよ。病気は毒とは違いますが、体を悪くするものには変わりはないですからね」


 どうやら解毒剤は体の調子を整えることができる魔法薬みたいだな。効果はそれほどでもないような気がするけど、きっと他にももっと強力な解毒剤があるのだろう。そんな物を使う機会はなさそうだけどね。


「解毒剤で使うのはこの毒消し草ですよ」

「薬草とはまたちょっと色が違いますね」

「ノースウエストの周辺の森には、どちらもたくさん生えていますので、素材には困らないと思います。まずは回復薬と解毒剤をしっかりと作れるようになりましょう」

「はい、ニャーゴ先生」

「ミュ」


 こうして次は解毒剤作りが始まった。ニャーゴさんが言っていたように、確かに回復薬よりは難しかった。でも、これまでの経験を生かして作業すれば、時間はかかったけど、ちゃんと完成させることができたぞ。


「できました!」

「さすがはリディル様ですね。これなら申し分ないですよ。ちょっとした毒や病気なら、立ち所に治すことができるはずですよ」

「試しに使ってみたいところだけど……」

「……さすがに服毒をすることは認められませんね。それにケガの治療と比べても、その効果が分かりにくいですからね」

「残念です」


 試しに毒を飲んで、と思ったのだが、やっぱりニャーゴさんに止められてしまった。まあ、ニャーゴさんに止められなくても、ルミ姉さんとミューには止められていただろうけどね。


 結局、解毒剤の試験はできなかったはずだ。どこかに毒や病気になった人がいないかな。

 解毒剤を作り終えたところで、休憩することにした。みんなで屋敷へ戻ると、ちょうどアルフレッド先生が戻ってきていた。


「お帰りなさい。畑と牧場はどうでしたか?」

「どちらも順調ですよ。牧場につきましては、明日にでも完成することでしょう。今、そこで育てる動物たちを探しに行っているところです」

「大丈夫なんですか?」

「大丈夫ですよ。みんな動物が飼えると分かって、張り切っていましたからね」


 う、なんだか余計に心配になってきたぞ。まあ、いいか。エルフさんたちなら、きっとなんとかしてくれることだろう。

 動物を探しに行っていると言うことは、馬と牛だけじゃなくて、鳥も飼うつもりなのかもしれない。新鮮な卵が毎日食べられるようになるといいね。


「ミュ……」

「そろそろアイスは固まったかな~?」

「どうやらミューは待ちきれないみたいですね。少し早いですが、昼食にしましょうか」

「アルフレッド様、あたしも手伝うッス!」

「それじゃ、一緒に作ることにしましょうか」

「はい!」


 うれしそうだな、ルミ姉さん。邪魔をしないように、ボクとミュー、ニャーゴさんはおとなしくテーブルの上の準備をしておくことにしよう。

 今日のデニス親方は町の料理屋で昼食を食べてくるだろうし、気兼ねなく二人で昼食の準備ができそうだね。

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