第175話 ルミ姉さんと一緒
「アイスが好評だったみたいなので、明日にでも追加を作ろうと思います。さすがに今からは無理そうなので」
「ミュ……」
「ごめんね、ミュー。アルフレッド先生、ニャーゴさん、明日、素材を分けてもらってもいいですか?」
「もちろんですよ。他の人たちにも声をかけて、ミルクを分けてもらってきますね」
「しばらくは使う予定のない素材ですので、問題ありませんよ」
これで材料の問題は大丈夫。あとは泡立てるのをどうするかだな。明日はデニス親方じゃなくてルミ姉さんがボクと一緒にいるみたいなので、ルミ姉さんに泡立て器をお願いすることにしよう。それならルミ姉さんも喜んでくれるはずだぞ。
ボクが必死に泡立てるよりも絶対に早く作ることができると思うんだよね。そして間違いなく、おいしいアイスになるはずだ。きめ細かい泡の方がより滑らかでおいしいからね。
ミューはよほどアイスが気に入ったようで、夜はボクが逃げていかないようにするためなのか、ガッチリとしがみついていた。
かわいいんだけど、ちょっと暑いかも。
翌朝、朝食を食べ終わったところでみんなの予定を聞く。アルフレッド先生は畑へ行ってくれるみたいだ。そのあとは牧場建設予定地の様子を見てくれるらしい。デニス親方はルミ姉さんと交代で、町に建設中の宿屋とお店をかねた建物の建築に向かうようだ。
その顔が楽しげなものになっていたので、きっとデニス親方は建物のでき具合が気になっていたのだと思う。
ニャーゴさんは昨日に引き続いて、錬金術の道具を作るみたいだ。アイスの下準備が終わったら、ボクも作らせてもらえることになった。やったね。
「フェロールはどうするの?」
「これから隣町へ行こうと思っております。リディル様とデニス殿が作ってくれた魔道具を持って、交渉せねばなりませんからな」
「頼んだよ、フェロール。でも無理はしなくてもいいからね。ダメそうなら、別の方法を考えるからさ」
隣町にノースウエストで造ったビールを置いてもらえるのかどうか。それ次第では、ノースウエストへ人を呼び込む方法を考え直さないといけないな。もしかすると、さらに向こうの領都まで、宣伝に行った方がいいのかもしれない。
「つきましては、リディル様の護衛をお願いしたいのですが」
「もちろんですよ。我々に任せておいて下さい」
「アルフレッドの言う通りだぜ。ルミナもいるし、大丈夫だ」
「任せるッス。坊ちゃんには指一本、触れさせないッス!」
「ミュ」
これだけ護衛がいれば大丈夫そうだね。もしケガをしたとしても、ニャーゴさんの魔法薬があるので問題なし。前よりも、ずっと安全になっていると思う。それに今日は、屋敷から外へは、そんなには出ないつもりだからね。
アイスが完成したら、世界樹さんのところへ持って行こうと思っているけどさ。
みんなが屋敷から出て行ったところで、ボクたちも今日の仕事を開始した。
毎朝恒例の世界樹さんへのあいさつをすませたあとは、まずはアイスを作らないとね。朝食のときから、ミューが期待を込めた目をボクへ向けているのだ。それに世界樹さんにも、あとで持って行くと話しているのだ。責任は重大だぞ。
でもその前に。
「ルミ姉さんに作ってもらいたい魔道具があるんだけど」
「待ってたッス、このときを! なんでも言ってほしいッス」
そんなわけで、ルミ姉さんに泡立て器を作ってもらうことにした。紙におおよその形状を描いて、どのような動きをするのかを話しておく。
泡立てる部分は歯車を利用して回せば、ぶつかることなくきれいに回るはずだ。回転する機構はポンプで使った物と同じなので問題なし。
「なるほど、これは面白そうッスね。任せるッス。兄よりもあたしの方が優れているところを坊ちゃんにも見せて上げるッスよ!」
「う、うん。期待しているよ、ルミ姉さん」
どうやらルミ姉さんはデニス親方にライバル意識を持っているみたいだね。デニス親方はドワーフの中でも上位に入る、物づくりの腕前を持っているみたいだし、憧れがあるのは当然か。
もちろんボクも憧れているので、ルミ姉さんの仕事を見ながら、しっかりと研究しておく。今のボクに足りないのは、動力として魔法文字を使う方法だからね。電気を動力にすることができれば、もっと色んな物を作ることができるのに。
この世界の便利な道具類は魔力で動くんだよね。それと電気がどのくらい違うのかが分からないので、そう簡単には手を出せないでいる。何か問題が起きたら困ることになるからね。研究は欠かせないのだ。
「ルミ姉さん、ここはこんな感じに動くんだよ」
「ふむふむ、それならここはこうした方がいいッスね」
「ミュ」
ミューが分かっているのかは分からないけど、三人で頭を寄せ合って泡立て器を完成させた。まずは試しに水を泡立ててみる。
ルミ姉さんがスイッチを入れると、ウィーンと高い音がなった。問題なく回っているみたいだね。
「問題なさそうだね。さすがはルミ姉さん」
「いやいや、坊ちゃんの知識がないと、なかなか難しかったッスよ」
「ミュ、ミュ!」
「そうだね。泡立て器が無事に完成したみたいだし、さっそくアイスを作ろうか」
「ミュ!」
アイスを作るのに必要な素材はすでにアルフレッド先生とニャーゴさんから受け取っている。あとは泡立て器を使って作るだけである。
この泡立て器があれば、昨日よりもずっと滑らかなアイスを作ることができるはずだぞ。
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