第174話 アイスを試食する

 アルフレッド先生が出してくれたお皿の上にアイスを入れていく。たくさんは作らなかったので、全部をきれいにつぎ分けることになった。

 もしミューが気に入ってくれるようなら、追加で作っておかないといけないな。


「おお、なんか白くてきれいッス」

「これも初めて見ますね。雪のようですが、そうではなさそうです」


 ルミ姉さんが目を輝かせ、ニャーゴさんがアゴに手を当てて、ふむふむと考え込んでいる。白いけど、雪とは全然違うからね。戸惑っているのかもしれない。でも雪か。


「ふむ、リディル様、なかなか上品な食べ物のようですな」

「雪か~それならカキ氷もいいね」

「リディルくん、まずはアイスを試食しましょう」


 カキ氷に思いをはせたボクをアルフレッド先生が現実へ引き戻してくれた。


「それじゃ、溶けないうちにみんなで食べよう! ミューもどうぞ」

「ミュ。ミュー!」


 一口食べたミューが飛び上がった。あまりの冷たさにビックリしたのかな?

 そう思っていたのだが、すぐに着地したミューがハムハムとアイスを食べ始めた。どうやらおいしさのあまり、飛び上がったようである。


 そうだよね、アイスはおいしいもんね。子供も大人もみんな大好きなアイスだもんね。ミューに続いてみんなも食べる。もちろんボクも食べた。


「冷たくておいしい。このミルクの甘さがとってもいいよね。もう少しボクにかき混ぜる力があれば、もっと滑らかなアイスができたのに」

「これはすばらしい食べ物ですぞ。そのまま王家に献上しても、問題ないでしょう。さすがはリディル様ですな」


 フェロールはとても気に入ったみたいだね。しきりにうなずいている。お母様が生きていたら、食べさせてあげたかったのかもしれない。

 そんなすごい食べ物がノースウエストに来れば食べられるとなれば、絶対に人が集まってくるよね。これならノースウエストもにぎわうこと間違いなし。


「おいしいですね。シャーベット以外に、こんなに冷たくておいしい食べ物があるとは思いませんでした。さすがはリディルくん」

「ボクが考案したわけじゃないんですけどね」

「確かにうまいな。酒にはちょっと合わなそうだが。坊主が考え出した物じゃないかもしれねぇが、今、俺たちの目の前にあるのは、まぎれもなく坊主が生み出した物だぞ」


 デニス親方がそう言ってくれた。この世界にアイスを生み出したのは確かにボクかもしれないな。作り方は異世界のだれかが考えた物だったとしても。


「そうッスよ。こんなに冷たくておいしい食べ物なら、女の人たちにも大人気になること間違いないッス」

「シャーベットもいいですけど、私はこっちも好きですね」


 ルミ姉さんもニャーゴさんも気に入ってくれたようである。ニャーゴさんはネコみたいなケットシー族なだけあって、ミルク味が気に入ったようである。

 アイスにお酒が合わないか~。いや、待てよ。


「アイスにお酒をかけてもおいしく食べられるよ。おすすめはウイスキーと赤ワインだね」

「ほう」

「おい、アルフレッド、赤ワインだ。俺はウイスキーを出す」

「ちょっと坊ちゃん、おかわりはもうないッスかねー!?」

「えっと、それが、全部つぎ分けちゃったんだよね」


 さすがに作った量が少なかったか。うまくいかなかったときのことを考えて、少量にしていたのが間違いだったようである。ここは全力で大量生産するべきだった。

 ちょっとガッカリした様子になったルミ姉さんだったが、それでも残りのアイスでどっちの味も試していた。


「これはいいですね。みんなも気に入ると思いますよ」

「これはいい。まさか酒にこんな使い方があるとは思わなかった。しかもうまい」

「もうこれは完成した食べ物ッスよ! 甘い物とお酒が同時に楽しめるなんて」

「子供にはちょっと早そうな食べ物ですね。ですがおいしいですよ」


 ボクとミューが食べたそうに見ていることに気がついたのだろう。ニャーゴさんがちょっと困ったような顔をしながらそう言った。フェロールが何も言わないところを見ると、気に入ってくれたのだろうけど、ボクに遠慮して何も言わないんだと思う。


 もう少し大人になれば、ボクもお酒を楽しむことができるのに。成人するのは十五歳になってからなので、それまでの辛抱だ。それでも十分に早い年齢だけどね。


「ミュ……」

「ミューもお酒が飲めたらよかったんだけど、飲ませていいのか分からないんだよね。アルフレッド先生、どう思いますか?」

「うーん、そうですね、リディルくんがお酒を飲めるようになったときに、一緒に解禁するのはどうでしょうか?」

「分かりました。そうします。それならミューと一緒にお酒が飲めるね」

「ミュ!」


 これで決まりだね。そのときになれば、ミューも今よりも少しは大きくなっているだろうし、大人の神獣として見ても問題ないはずだ。十五歳の成人が待ち遠しいな。

 みんながきれいにアイスを食べ終えた。ミューも気に入ったようで、お皿をペロペロとなめている。どうやら食べ足りなかったようだね。


 これから追加のアイスを作れば、明日の朝には食べることができると思うけど、もういい時間なんだよね。そろそろボクもミューも眠る時間である。

 アルフレッド先生たちに作ってもらうという手もあるけど、疲れているのはみんな同じなんだよね。それなのに、これ以上、みんなを働かせるわけにはいかないな。

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