第170話 冷蔵庫と冷凍庫を完成させる

 最後はニャーゴさんだね。午前中はずっと調合室にこもっていたみたいだから、かなりの数の魔法薬ができているのではないだろうか。

 もしそうなら、ルミ姉さんたちが建てている建物が完成すれば、すぐにでも錬金術の道具を売りに出すことができるぞ。


「ニャーゴさんはどんな感じですか?」

「初級の回復薬と解毒剤をそれぞれ十個ずつ作っておきましたよ。あとは中級の回復薬を二つほど。これだけあれば、急なケガ人が出ても大丈夫なはずです」

「そんなに作ったんですね。ボクも冷蔵庫作りが終わったら、ニャーゴさんに習って、錬金術の道具を作れるようにならないと」


 錬金術の道具を作れるようになれば、ボクはもっと色んなことができるようになるぞ。何もできない領主よりも、色々できた方がみんなの役に立てるよね。

 午後からはがんばって冷凍庫を完成させないといけないな。そして明日からはニャーゴさんに、錬金術の道具の作り方を本格的に教えてもらうんだ。


「回復薬に解毒剤が手に入るようになれば、ノースウエストの住人たちもより安心して生活できるようになりますな」


 満足そうにうなずくフェロール。ボクの今の顔は、きっとフェロールと同じような顔つきになっていると思う。だってボクもそう思うからね。

 急なケガ人や病人が出ても、慌てる必要はないぞ。


「ノースウエストで錬金術の道具が買えるようになれば、きっとここへくる人も増えると思うよ」

「そうでしょうなぁ」


 これで辺境の地であるノースウエストに人が集まるようになれば、名実共に「町」として胸を張って言うことができるだろう。

 今はちょっと町とは言えないからね。無理やり町に昇格したような感じだし。


「牧場が完成して安定してお肉を食べられるようになったら、さらに人が集まってくるかもしれないね」

「そのときまでには、追加で宿屋や店を作っておかないといけねぇな。腕がなるぜ。こうしちゃいられねぇ。坊主、冷凍庫を作るぞ。それを持って、フェロールに交渉してもらわないといけないからな」

「そうだね。冷蔵庫に入れておいたジュースとお酒も冷たくなっているころ合いだろうからね」


 ああは言っているが、デニス親方の狙いはたぶん冷えたビールだろう。昼食のときはアルフレッド先生と一緒にワインだけを飲んでいた。きっとそれを見越してビールを飲まなかったのだろう。




 午後になり、それぞれが作業を開始する。アルフレッド先生とフェロールは畑に行くようだ。収穫は終わったけど、畑の手入れはまだだからね。ニャーゴさんはお店の建設予定地に行くらしい。売り場の広さを確かめたいそうだ。


 大型の錬金術の道具でも売りに出すつもりなのかな? 畑で使う肥料なんかも売りに出すつもりなのかもしれない。それなら場所を取るからね。でも、畑を持っているノースウエストのみんなにとってはうれしいに違いない。


 そういえば、魔道具を売るつもりはないのかな。魔道具を売りに出せば、錬金術の道具と同じようにここまで買い求める人がくると思うんだけど。

 でもよく考えてみれば、魔道具を作る人がまだいないな。ドワーフさんたちは一つしか作らないからね。どうしても人族の働き手が必要になるのだ。


「どうした、坊主?」

「ノースウエストに住む人がもっとたくさんいたら、魔道具を作って売りに出せるのにと思っただけだよ」

「そのためには客寄せが必要だぜ。ほら、キンキンに冷えたジュースだ。問題なく冷蔵庫はできあがったみたいだぜ」


 そう言って、もう片方の手に、キンキンに冷えたビールを持ったデニス親方がジュースを渡してきた。

 確かにキンキンに冷えているな。たくさん飲んだらおなかを壊しそうだね。


 ミューはすでに飲んでいるようだ。満足げな表情で飲んでいるところを見ると、合格点はもらえたみたいだね。

 ジュースを飲み終えると、さっそく冷凍庫作りだ。こちらは冷蔵庫よりも、使っている魔法文字が難しいらしい。


「このくらいの大きさにしておこう。これ以上、大きくなると、魔法文字を書いた物を二つにしなきゃならねぇ」

「二つにすると効果が二倍になるの?」

「二倍にはならないが、一つよりかは多少、効果が上がる。効率がよくねぇから、普通はやらないな。それなら二つに分けた方がいい」


 なるほどね。どうしても一つにしたい場合は、使ってる魔法文字を改良した方が効率がよさそうだ。今のボクなら、多少の改良はできるはずだぞ。いくつか魔道具を作って、そのときに使った魔法文字を覚えているからね。


 まあ今はそれは置いておいて、冷凍庫を完成させないといけないね。

 デニス親方に習いながら冷凍庫の外装を作っていく。冷蔵庫を作ったときよりも断熱材を厚くして、より冷気が漏れ出さないようにする。


 外装が完成したら、いよいよ冷凍庫で使う魔法文字を鉄板に書いていく。確かに冷蔵庫で使った魔法文字よりも複雑だな。それに、魔法文字を書く鉄板も小さくなっているので、細かい作業になる。


 だが、マジックバッグを作ったことのある今のボクなら、問題なく書くことができるぞ。少し時間がかかったが、無事に冷凍庫を完成させることができた。


「できた。これで完成だね。さっそく何か入れて試してみたいところだけど」


 そう思って何かないかと探してみる。そうだ、さっきフェロールにもらったミカンがあるんだった。これを凍らせてシャーベットにしてはどうだろうか。




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