第168話 冷蔵庫作り

 色々とやりたいことがあるけど、何をするにしても問題が生じるみたいだね。ここはやはり、地道に一歩一歩着実に前進して行くしかないか。

 お風呂からあがるとまずは一杯だね。お風呂で失った水分を補給しないと。デニス親方はもちろん冷たいビールを飲んでいた。

 さすがにアルフレッド先生とフェロール、ニャーゴさんは飲んでいなかったけど。


 ボクとミューは冷たい牛乳を飲んだ。大きくならないといけないからね。カルシウムは大事だぞ。

 そのあとは明日の予定を話してから眠りについた。牧場の話はアルフレッド先生が進めてくれるそうである。それならボクは冷蔵庫作りに集中できるね。




 翌朝、朝食を食べると、さっそく魔道具作りを始めることにした。デニス親方もやる気十分の様子である。


「ずるいッス! あたしも坊ちゃんに冷蔵庫の作り方を教えたかったッス」

「ルミナは別の仕事があるだろう? まずはそっちに集中しろ。宿屋と商店が建たなきゃ始まらねぇからな」

「ぬう、それは分かってるッスけど……」


 ブツブツ言いながらも、デニス親方の言い分が正しいと判断したようだ。ちょっと背中を小さくしたルミ姉さんが町の建設現場へと向かって行った。

 夕食を建築現場のみんなと食べていたので、てっきり建築に専念したいんだと思っていた。

 でもそれはそれ、これはこれのようである。


「それでは私は牧場の話を進めておきますね。間違いなく引き受けてくれると思いますよ。問題はどこに牧場を作るかですね」

「動物たちの運動になるように、ちょっとした丘があった方がいいですよね。日当たりがよくて、よく牧草が育つ場所。ため池を作った周辺はどうですか?」

「なるほど、確かにあそこならよさそうですね。動物たちが水を飲むのにもちょうどよさそうです」


 ため池から水を少しもらうようにすれば、水飲み場もすぐに作ることができそうだね。どうせならちょっとした小川を作るのもいいかもしれない。自然豊かな場所で、伸び伸びと育ってほしい。


 まあ、スクスクと成長したあとは、お肉としておいしくいただくことになるんだけどね。それはしょうがない。感謝しながらいただかないと。

 牧場を作れば、いつでも新鮮なミルクを得ることができるぞ。あと卵も。楽しみになってきたな。


 アルフレッド先生とルミ姉さんが出発したところで、冷蔵庫を作り始めた。フェロールは作物の収穫に向かってくれるみたいである。畑のことはフェロールに任せておこう。ニャーゴさんは今日も錬金術の道具作りだ。ミューはボクと一緒だね。


「それじゃ、張り切って作っていくぞ」

「よろしくお願いします!」

「ミュ!」

「いい返事だ。まずは入れ物を作らねぇといけないな。外側は金属製にして、間に断熱材を入れる」

「分かりました」


 こうして冷蔵庫作りが始まった。新しい魔法文字を教えてもらい、鉄板に書いていく。今回、魔法文字を書く場所は広いので、指先でなぞるようにして書いた。

 ……やっぱりマジックバッグを作るのは高度な技術がいるみたいだね。初心者の魔道具師が挑戦するべき魔道具ではなかったようである。


「こっちの方が簡単だね」

「まあ、マジックバッグや鑑定の魔道具に比べたらな。できあがる魔道具が大きい物になるほど、魔法文字を書くのは楽になる。もちろん、複雑な魔道具なら、それでも小さな文字で書かないといけないぞ」

「冷凍機能をつけるとなると、もっと複雑になるのかな?」

「それなりにな。だが、別々の場所に魔法文字を書くことになるから、大したことはない」


 なるほどね。魔法文字が複雑になりそうなら、機能ごとに分けて書くようにすればいいのか。それならそこまで難しくはなさそうだ。

 そうしてデニス親方に教えてもらいながら作業をしていくと、まずは冷蔵庫部分が完成した。


 料理店に設置してもらうので、それなりに大きな冷蔵庫になっている。ちょっと置く場所が心配になってきたけど、便利なので喜んで置いてもらえると思う。


「できたね。さっそく性能を試してみないと。ジュースを入れておこうかな?」

「そうだな。性能試験は大事だ。ジュースだけじゃ分からないかもしれん。ビールも入れておこう」

「デニス親方が飲みたいだけでしょ。まあ、入れておくけどさ」


 そうして冷蔵庫に冷やしておきたい物を入れていると、どうやら昼食の時間になったようである。いつの間にか戻ってきていたアルフレッド先生がサンドイッチを持ってやって来た。


「たまには外で食べるのもいいでしょう。これはまた大きな物を作りましたね。これでは室内で魔道具作りをするのは厳しそうですね」


 途中まで完成した冷蔵庫を見て、アルフレッド先生が笑っている。屋敷に設置されている冷蔵庫に比べたら二倍以上の幅があるからね。その大きさにちょっとあきれたのかもしれない。


 フェロールとニャーゴさんがやって来たところでみんなで昼食にする。フェロールもニャーゴさんもその大きさに驚いていた。


「リディル様、ここにさらに冷凍庫が加わるのですよね?」

「そうなるね。冷蔵庫は別にした方がいいかな?」

「その方がいいかと思います。料理店の調理場は確かに広く作ってありますが、さすがにこれ以上の大きさになると、調理場とは別の場所に置くことになるかもしれません」

「それはちょっと取りに行くのが面倒なことになりそうだね」


 一体化した冷凍庫つき冷蔵庫にしようかと思っていたんだけど、分けた方がよさそうだ。それならそれぞれを別の場所に置くことができるからね。使い勝手もよくなることだろう。

 使い手のことも考えて魔道具を作らないとね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る