第167話 販売方法について話す

 みんなの前にミルクシチューが並んだところで夕食を食べることにする。もちろん、ボクとミュー以外の人たちの前にはお酒が並んでいるぞ。最近はフェロールもみんなと一緒にお酒を飲むようになったのだ。いいことだと思う。

 もちろん、ボクとミューの前にあるのはブドウジュースである。


「いただきます!」

「ミュ!」

「これは……すごく濃厚でおいしい! 野菜のうまみが全部溶け込んでる」

「ミュ、ミュ!」


 ミューも気に入ったようである。熱がる様子もなくシチューを食べていた。ボクにはちょっと熱かったので、フーフーと冷ましながら食べる。

 うむ、肉もやわらかく、ほどけるようでとってもおいしい。保存していた肉を使ったのだろうけど、すごくおいしい味がしみ出している。さすがだな。


「明日からは魔道具作りだね。錬金術の道具も作りたいけど、同時にやるのは難しいかな?」

「今の坊主の実力なら、どっちつかずになるかもしれねぇな」

「それじゃ、まずは魔道具を作ろうかな。それが完成すれば隣街の料理店と交渉することができるからね」

「リディル様、隣街では錬金術の道具を売らないのですか?」


 ニャーゴさんがそう聞いてきた。ノースウエストではニャーゴさんのおかげで錬金術の道具を作り始めることができそうだし、きっとそれを売りに出すことも視野に入れていたんだろうな。

 木工品や陶芸品、果物や野菜、それからお酒なんかも一緒に売りに出すつもりだからね。


「それが、のみの市で売るのはやめることにしました。値段が安くて、もう必要なくなった物を売る場所みたいでしたからね」

「そうでしたか。それならどこかのお店で出してもらうのはどうですか?」

「それも難しそうです。そもそも、錬金術の道具を売っているお店が少なかったですからね。店を持つにしても、商業ギルドに加入する必要があるみたいです」

「なるほど、商業ギルドに入るとなると、色々と制約を受けそうですからね」


 どうやらニャーゴさんは納得してくれたみたいだね。商業ギルドが間に入る必要があることも分かるけど、それによって誓約があるのは困る。会員費を毎月支払う必要があるとかならまだ分かるけど。

 仕入れ先や、いくつ商業ギルドに卸すようにとか言われるととても困ることになりそうだ。


「ニャーゴさんには申し訳ないですけど、しばらくの間はノースウエストでのみ売ることになると思います」

「それで構いませんよ。どのような道具が売れるか、分かりませんからね。必要ならば、隣町からノースウエストへ買いにくることでしょう」


 それならば「ノースウエストには錬金術の道具が売っている」という情報を隣町へ流してもらわないといけないね。その辺りは隣町に詳しいフェロールにお願いすればなんとかなるはずだ。




 みんなでおいしく夕食を食べたあとはみんなでお風呂である。夕食の途中で帰ってきたルミ姉さんは夕食もお風呂もすませているようであり、そのままお酒を飲んでから寝るということだった。


 ……夕食のときにお酒は飲んでいるはずなのにまだ飲むのか。寝酒ってやつなのかな? 健康にいいとは思えないんだけど、それは人族での話である。きっとドワーフ族は違うのだろう。


「お風呂も手狭になってきましたね」

「みんなで入るならそうですね。拡張するのもいいかと思いますよ」

「いいな、それ。みんなでゆっくりと入れるように広くしようぜ! どうせこれからもっと大きくなるんだからな」


 アルフレッド先生の意見にすぐに賛成するデニス親方。どうやらこの屋敷がもっと大きくなるのは確定路線のようである。なんとかしてボクがうまく手綱を握らなくては。

 でも、お風呂を大きくするのには賛成である。大きくなった分だけ、新しい種類のお風呂を作りたいな。


 ジェットバスだけじゃなくて、ゆっくり入れるヒノキ風呂とか、露天風呂なんかもいいかもしれない。夜空の星を見ながらお風呂に入るのとか、よくない? 夢が広がるな。


「そういえば、隣町にはお風呂屋さんがあったね。やっぱり庶民の家にはお風呂はないのかな?」

「商会などを運営して、それなりにお金を稼いでいる家にはあるみたいですな」


 どうやらフェロールはお風呂についても調べてくれていたみたいだ。さすがはフェロール。頼りになる。そしてお風呂は庶民には手の届きにくい物のようである。


「そうなんだね。それじゃノースウエストにある大浴場はちょっとした観光名所になるかもしれないのか」

「そうなると、無料でだれでも使えるのは問題になるかもしれませんな」


 フェロールがううむ、と考え始めた。確かにそうかもしれない。ノースウエストを訪れる人が少ないうちは大丈夫だと思う。でも、人が押し寄せるようになったら、とてもではないけどさばききれないはずだ。


「どうしようかな。お金を払って使ってもらうようにするのはまだ早いと思うんだよね」

「それではノースウエストの住人だけ、無料で使えるようにいたしましょう。そのためには、ノースウエストの住人であることを証明する物が必要になりますな」

「住民票が必要になるのか。今はノースウエストに住んでいる人が少ないからいいけど、増えてくると大変そうだね」

「確かに。管理する人を雇う必要がありそうですな」

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