第165話 帰りの馬車でお酒の話をする
さすがにこの場でお酒の状況を聞くわけにもいかなよね。いい気分になっているデニス親方がお酒の話をしたら、とても長くなりそうな気がする。
そのため、デニス親方を交えてからある程度話をしたところで、町長さんの家から帰ることにした。
「お世話になりました。色んな話が聞けて、とてもよかったです」
「いえ、こちらこそ、有意義なお話をありがとうございます。ノースウエストはこれからドンドン大きくなっていきそうですね」
「そうしたいと思っていますよ。これからもよろしくお願いします」
「もちろんですよ。こちらとしても、ありがたい限りですからね」
ノースウエストが発展すれば、この町にも新しい商品が運ばれてくることになるからね。この町は隣の領都ともつながっている。そのため領都へも商品を売りに出すこともできるし、逆に領都からこの町へ買いにくる人も増えることだろう。
「また来て下さいね」
「もちろんですよ。そのときはまたミューも一緒に連れてきますね」
「ミュ!」
「楽しみにしてますわ」
ちょっとの時間だったけど、サリー嬢とは少しだけ距離を縮めることができた。ミューはボク以上にサリー嬢との距離を縮めているみたいだけどね。
そんなサリー嬢とお別れをして、ノースウエストへと帰った。
帰りの馬車の中で、デニス親方が集めた情報についての話をする。どうやら町にあったお酒はすべて試し飲みしてきたみたいだ。
「なんと言うか、ノースウエストの酒の方が断然上だな。こりゃ、ノースウエストの酒を売りに出せば、すごい勢いで売れるぞ」
「そんなに違ったんだね。値段はどのくらいだった?」
「値段はこの紙に書いてあるぜ」
さすがはデニス親方。抜かりはないようだ。その紙を見せてもらいつつ、お酒を売るとすればどのくらいの値段にするかを考える。
「うーん、ノースウエストのお酒の方が質がいいのなら、同じ値段で売りに出すのはよくないよね? 隣町の酒屋が潰れちゃうかもしれない」
「聞いた話だと、あの町では酒を造ってはいないそうだ。酒はすべて隣の領都や、他の町から持ってきているみたいだ。だから困るとすれば、仕入れ先の方だろうな」
「ふむ、さすがに以前から取り引きのあるお店から顧客を奪うのはよくないでしょうな。リディル様の心証が悪くなるかもしれません」
うーむ、と考え始めるフェロール。ボクの心証が悪くなっても気にしないけど、ノースウエストの心証が悪くなるのは困るな。
そしてフェロールの言う通り、同じ値段で、質のよい物だったら、絶対に質のいい物を買うに決まっている。さすがに相手のお店を潰すつもりはないので、その辺りはよく考えないといけないな。
「デニス殿、売られていたお酒の種類はワインとウイスキーだけでしたかな?」
首をかしげながらフェロールがそう尋ねた。そうか。まだ売られていないお酒を売りに出せばいいのか。それなら他から顧客を奪うことにはなりにくいだろう。
もちろん、ワインやウイスキーから、別のお酒へと完全に切り替えたら、その限りではないけどね。
でもそれは酒屋としての戦略だし、ボクたちはきっと悪くないぞ。
「ワインとウイスキーだけだったな。酒の種類と酒の味なら、ノースウエストが一番だぜ。さすがは坊主が考案しただけはあるな」
「ボクというよりかは、先人の人たちのおかげなんだけどね」
「それでも坊主が教えてくれなければ、新しい酒も、うまい酒も飲むことはなかったはずだぜ」
そう言ってからガッハッハと笑うデニス親方。どうやら細かいところには気にしないタイプのようである。うまい酒を飲めればそれでよし。大変分かりやすい。
「それではまずはビールを売りに出すことにしましょうか。お神酒や火酒を売りに出したら、問題になるかもしれません。それにビールなら、その二つよりもたくさん作ることができますからね」
アルフレッド先生がそう提案してきた。やはり日本酒であるお神酒と、ウォッカである火酒を売るのはまだやめておいた方がいいと判断したようだ。ついでにエルフのブドウで作ったワインもね。
どれもとても珍しいお酒みたいだから、簡単には売りに出せないみたいだ。こんな場所で貴重なお酒が普通に売られていたら、すごく注目を集めることになると思う。
しっかりとした防衛体制が整うまでは、ノースウエストだけで売りに出すようにしよう。
たぶん、売りに出してもドワーフさんや町の人たちが全部買い込むことになりそうだけどね。
「ホップの育ちがいいみたいですね」
「そのようですね。毎日、新しい実が実っているみたいです」
収穫も忙しいみたいだね。自動収穫装置を作っておいてよかった。これがなかったら、他の作物はそっちのけで、ひたすらホップを収穫することになっていたぞ。
ビールを隣町で売るのなら、ビールの増産も視野に入れておく必要があるな。
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