第161話 お店見学
昼食を食べながら、これからの予定を話した。まずは商店街に行きたいところだね。
「この町の大通りに行って、どんな物が売っているかを確認しないといけないね」
「それと値段の確認も必要ですね。ノースウエストで物を売るときに、高くても、安くてもいけませんからね」
「酒の値段を調べるのは俺に任せてくれ。ついでに酒の品質もチェックしておく」
「それってデニス親方がただ飲みたいだけだよね?」
ボクの質問に目をそらせて答えるデニス親方。どうやら図星だったみたいだ。本当にデニス親方はブレないな。
デニス親方は俺たちから別れて行動するみたいだ。お酒に詳しくないボクがお酒のことを調べてもどうにもならなそうだからね。そうしてもらうことにした。
「それじゃ、ボクたちは家具や錬金術の道具が置かれているお店を見に行きましょう」
「そうしましょうかね。フェロールさんがこの町に詳しいようなので、案内してもらいましょうか」
「お任せ下さい」
「フェロール、酒蔵の位置を教えてくれ」
「こちらがこの町の地図になります」
こんなこともあろうかと、フェロールは事前に地図を準備していたようである。どうしてこのタイミングで? と思ったけど、さすがのフェロールでも、別れて調査することになるとは思わなかったようである。
フェロールがデニス親方に酒蔵のある場所を示した地図を渡したところで、昼食の時間は終わりになった。ここからはいよいよ、本格的な調査の時間である。
ミューが迷子にならないように、抱きかかえて移動することにしよう。
そうしてデニス親方と別れたボクたちはまっすぐにこの町で一番大きな通りへとやってきた。
馬車が二台すれ違うことができるくらいの広さの道には、色んなお店がズラリと並んでいた。
「そういえば、物を売り買いできる場所が限られているんだったよね?」
「そうですね。この町でお店を持っていない方は専用の場所で売ることになります」
「そこにも行ってみたいかな」
「分かりました。それではこの通りを見たあとで参りましょう。ちょうどこの通りの先にありますので」
それならちょうどよかった。場合によってはそこで売った方がいいかもしれないからね。もちろん、この町に支店を作ることも視野に入れておく。
通りに並んでいるお店は、野菜や果物、肉だけでなく、服や装飾品、日用品、家具などもあった。
「値段はこのくらいなのか。肉の値段は高いみたいだね」
「肉は日持ちしませんからな。もう少し日が暮れれば、値段も下がってくると思います」
「なるほど、肉の値段は変動するのか。それじゃ、肉が腐らないようにすれば、いつでも安く買えるようになるかもしれないね」
お店の人も仕入れたお肉を無駄にはしたくないだろうからね。腐って捨てることになるくらいなら、どんどん値段を下げて売ってしまおうと思うはずだ。
品質的にはどうかと思うけど、買う人からすると安く買えるので気にしないのかもしれない。
「それなら冷蔵庫が必要になりますね」
「冷凍庫で肉を凍らせて保存するのもいいと思いますよ。品質は多少落ちますけど、長期保存することができますからね」
「なるほど、確かにそうですね。それでは、生鮮食品を売るお店には冷蔵庫と冷凍庫を準備するようにしましょう」
デニス親方とルミ姉さんはもう作らないかもしれないけど、他のドワーフさんたちが作ってくれることだろう。その間に魔道具師を育てれば、そこからはその人が同じ魔道具をどんどん作ってくれるはずだぞ。
「木箱に氷をたくさん入れておけば、町まで持って帰ることができますかね?」
「うーん、どうでしょうか。もしかすると、錬金術の道具にちょうどいい物があるかもしれません。帰ったらニャーゴさんに聞いてみましょう」
錬金術で保冷剤を作ることができたらうれしいな。そしたらノースウエストからでも、肉を持って帰ることができるだろう。
いや、それよりも、薫製肉やベーコン、チーズなんかを買って持って帰ってもらった方がいいかもしれない。それなら日持ちするからね。
その後も店を見て回る。家具を売っているお店の物よりも、ボクたちが作った木工品の方が、見た目も性能もよさそうだぞ。
どうやらここで作っているのではなくて、どこからか輸入しているみたいだ。それならボクたちが作った物をここに置いてもらうこともできるかもしれないな。
「服は……どうやら古着みたいだね」
「そのようですな。さすがにこの地にまで未使用品を持ってくることはないようです。未使用品は値段も高いですからな」
「ノースウエストで服を生産できるようになったら、買ってもらえるかな?」
「うーむ、値段次第でしょうな」
確かにフェロールの言う通りだね。なるべくみんなの手に渡るくらいの値段にしたいところだけど、エルフが作った服なら、ものすごい値段になるのではないだろうか。
もしかして、領都まで売りに行った方がお金になったりする?
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