第157話 お店に並べたい物

 無事に第一回錬金術講座が終わったところでお昼の時間になった。みんなで食堂へ向かう。どうやらデニス親方もルミ姉さんも戻ってきてはいないようだ。たぶんみんなで酒場へ行っているんだろうな。そしてそこでお酒を飲んでいるのだろう。


 別に昼間からお酒を飲むことを禁止にしているわけではないので問題はないのだが、果たしてそれは体にいいのだろうか。ちょっと、いや、かなり疑問である。


「午後からは宿屋と商店の建設の様子を見に行こうと思います」

「それではそうすることにしましょう。さすがにまだ完成していないと思いますがね」


 アルフレッド先生が眉間にシワを寄せている。まさかの可能性も考慮しているのかもしれない。さすがにそれはないと思うよ。


「お店が完成したら、そこでニャーゴさんの道具を売ることになるんだけど、何かいい物はありますか?」

「そうですね、ひとまずは回復薬と、解毒剤を売りたいと思います。あとは石けんですかね。大浴場で使ってもらえればと思っています」

「それはいい考えですね」


 将来的には町の人たちの副業として石けんを作ってもらおうと思っていたのだ。ニャーゴさんが石けんを売ってくれることで、みんなの意識もいい感じに残るんじゃないかな。

 そうすれば、実際に石けんを作ることになっても、抵抗感が少なくてすむに違いない。


「リディル様からは何か売ってほしい道具はありませんか?」

「そうですね、回復薬があればひとまず安心だと思っていたので、他はちょっとすぐには思い浮かびませんね」

「それでは何か思いついたらいつでも言って下さい。できる限り準備しますので」

「そのときはよろしくお願いします」


 お昼を食べつつ、今後の予定を話す。まずは宿屋と商店が完成するのを見届ける。それからお店で実際に物を売ってみて、その感触を確かめる。

 問題なさそうなら、販路を拡大して行くことができるといいかな。


「リディルくん、近いうちに隣町の見学に行きませんか?」

「そうでした。見学のことを忘れてました。せっかくなので、領都まで行ってみたいところですね」


 いけない、いけない。錬金術とお店のことに頭を使いすぎてすっかり忘れていたよ。それだけボクの気持ちがそちらへ向いているってことだね。

 木工品と錬金術で作った道具を売ることで、ボクもノースウエストの発展に貢献できるといいな。


「できることなら、お店を開店させる前に視察を終わらせた方がいいでしょうな。その方が今後のお店の方針を決めやすくなると思いますぞ」

「確かにフェロールの言う通りだね。隣町や隣の領地でどのような物が売れているのかを知れば、需要のある物を重点的に売りに出すことができるようになるかもしれない。アルフレッド先生、明日、視察へ行くのはどうですか?」

「それでは明日、視察へ向かうことにしましょう。デニスにも伝えておかなければいけませんね」

「ありがとうございます。ボクも準備をしておきます」

「ミュ!」


 ミューはどうしよう。金色の角が生えているから絶対目立つと思うんだよね。ミューにも姿を変える魔道具が必要なのではなかろうか。


「アルフレッド先生、ミューも一緒に連れて行きたいのですけど、この角が目立ちますよね?」

「目立つでしょうね。ミューには専用の姿を変える魔道具が必要になりますが、あいにくと角を消す魔道具は持っていないのですよね」

「そんな魔道具もあるのですね」


 この世界には竜人族もいるんだったな。本来なら、その人たちの角を隠すための魔道具なんだろうな。確かにその魔道具なら、ミューの角も消すことができそうである。


「デニスが持っているといいんですけど」

「それじゃ、早いところデニス親方のところへ行きましょう。もし持ってなかったら、みんなに持っていないかを聞いて回らないといけないですからね」


 ノースウエストにはドワーフとエルフが何人もいる。その中には角を消す魔道具を持っている人がいるかもしれないのだ。

 もし持っている人がいなかったとしても、その魔道具を作ればいいだけだからね。デニス親方ならきっと作り方を知ってるはずだ。


 ニャーゴさんはこのままここに残って魔法薬を作るそうである。フェロールは野菜と果物の収穫に向かってくれるらしい。ボクがプレゼントしたマジックバッグがずいぶんと役に立っているみたいだね。


 二人と別れたボクたちは町の中心部から大通りへと進み、建設現場へとやってきた。どうやらすでに基礎は完成し、一階部分もほぼできあがっているみたいである。


「すごい! さすがはドワーフとエルフだね」

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