第154話 錬金術部屋を見せてもらう
翌日、さっそく完成したニャーゴさんの錬金術部屋を見学させてもらうことになった。そしてありがたいことに、そこで第一回の錬金術の授業をしてくれるそうである。すごく楽しみだ。
「ミュ!」
「ミューも楽しみなんだね。ボクもだよ。一体何の作り方を教えてくれるのかな」
「そんなに期待されるとちょっと心苦しいですね。最初なので、大した物ではありませんよ。アルフレッドさんならすでにご存じでしょうからね」
「それでも構いませんよ。錬金術には色んな流派がありますからね。何か得られるものはあるはずです」
そうしてたどり着いた離れの屋敷は、レンガを積み上げられて作られた立派な建物だった。屋根はエルフさんたちが言っていたように木造だ。火事には気をつける必要があるけど、爆発したときには屋根が飛んで爆風を和らげてくれる効果が期待できる。
煙突もあるみたいだね。これなら体に悪そうな煙が出ても、被害は少なくてすみそうだ。
「他のドワーフさんやエルフさんたちはどうしたの?」
「他の連中は宿屋と商店を建てに行ったぜ。みんなで建てた方が早いだろうって言ってたな」
「確かにそれはそうなんだけど、休みとかいらないのかな?」
「いらないらしいぜ」
みんなの気持ちが分かるのか、デニス親方が楽しそうに笑っている。本当に物づくりが好きな人たちの集まりだよね。
どちらかと言うと、エルフさんはノンビリとしているような印象があったけど、どうやらそうでもないみたいだ。それだけ毎日を楽しく過ごせているってことだね。いいことだと思う。
デニス親方とニャーゴさんに続いて部屋の中に入る。部屋にはカーテンや雨戸はなく、中が丸見えになっている。隠すことなんてないと言うことなのかな?
いや、違うか。もしかすると、何かあって倒れたときに外からでも分かるようにしているのかもしれない。錬金術はボクが思っている以上に危険なのかもしれないぞ。
煙突のそばに設置されているのは大釜だ。すごい。魔女が使うような大釜だね。中にはまだ何も入っていないようだ。
次に目についたのはガラスでできた機器だ。これだけのガラス製品を作るのは、間違いなく大変だったはずだ。細い管がカーブした物がいくつもある。他にもビーカーやフラスコ、試験管のような物もあるな。
「すごいですね。この器具はニャーゴさんが持ってきたのですよね?」
「そうです。私の家で、代々使われてきたものですよ。何度も壊れているので、その都度、新しいのに取り替えていますけどね」
いいのかな、そんなすごい機器をこんなところに持ってきて。ニャーゴさんの家庭の事情は分からないけど、だれかの迷惑になっていないといいな。
他にもてんびんや、計測用のカップ、スプーンなどが作業台の上に置かれている。
「ニャーゴさん、壁際に置かれている家具の中には何が入っているのですか?」
「あそこには使用頻度の高い素材を入れされてもらっています。リディル様とアルフレッドさんが作って下さったのですよね? ありがとうございます。重宝してます」
ニャーゴさんが頭を下げた。ボクが作ったのは引き出しのたくさんついた棚だ。アルフレッド先生はボクが作ったものよりも、さらに小さな引き出しがたくさんある棚を作っていた。さすがはアルフレッド先生だね。
「どんな素材が入っているのか、見てもいいですか?」
「もちろんですよ。いくつかお見せしましょう。中には危険な物もありますので、安全な素材だけになりますけどね」
危険な素材も入っているのか。しかも棚に入っているということは、危険でも、よく使うものなのだろう。薬と毒は紙一重だからね。
少しでも量が増えれば毒になり、ほんの少しなら薬になるだなんて、よくあることなのだろう。
ニャーゴさんに見せてもらったのは、主に鉱石類の素材だった。これなら安定していて安全なのだろう。
そう思っていたのだが、衝撃を与えると爆発する石や、近くにあるだけで体力を奪われる石もあるらしい。見せてはもらえなかったけどね。
「色んな素材があるのですね。こっちは木の実ですね。木の実のカラも魔道具として利用できるのですよね」
「その通りです。もちろん錬金術でも使うことはありますよ。投げると爆発する道具とかが主な用途ですけどね」
この世界にはまだプラスチックがないからね。その代わりになっているのが、木の実のカラのようである。森で見つけたら、積極的に拾っておくべきなのかもしれない。
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