第152話 お金の話

 自衛団のことをアルフレッド先生にも話してみた。その反応はあまりよくないようである。首をひねっていた。


「もっと町の規模が大きくなれば必要かもしれませんが、今のところは大丈夫だと思いますよ? 私たちエルフだけでなく、ドワーフもいますからね。この町に何かあるようなことがあれば、真っ先に対処することになるでしょう」

「それはありがたい話ではあるのですが、なんだか申し訳ない気がします」

「とんでもない! リディルくんが気にする必要はありませんよ。みんながそうしたくてやっているのですから」


 アルフレッド先生が言うように、そんな感じではあるんだよね。宿屋と商店を作る話だって、本来なら多額のお金が動くはずだ。でもドワーフさんもエルフさんも、何も言わずにやってくれるんだよね。

 確かに、ボクが造ったお酒やらなんやらの借りがあるのかもしれない。でも、それにしては多すぎると思っている。


「リディル様、どうしても報酬のことが気になるのであれば、もっとワインを売ってまいりますよ? そこから得たお金を報酬として渡すのはどうでしょうか」

「そうなんだよね、フェロールにワインを色んな場所で売ってもらえばお金を稼ぐことはできるんだよね」

「おすすめはしませんよ」


 アルフレッド先生が苦笑いしている。フェロールも分かっているのか、同じように苦笑いしていた。どうやらフェロールはボクに考えさせるために、あえてその話題を出したみたいだね。

 試されているってことだろう。ノースウエストも発展し始めているし、いつまでも無知な領主でいるわけにはいかないのだ。


「そうですよね。ボクもそう思います。そのワインを生産しているのがこの場所だということが知られれば、人が押し寄せることになりそうです。それはボクの理想とする町作りとは違うような気がします」

「そうでしたか。それではこの案は、将来どうしてもお金が必要になったときまで、取っておくことにいたしましょう」

「そうしておいて」


 お金が必要になるときか。大勢の兵士を雇う必要があるときとかかな? そんなときが来なければいいんだけど。

 そうして話していると、デニス親方とニャーゴさんが屋敷へと戻ってきた。どちらもいい顔をしているので、納得できる部屋ができあがったのだろう。


「お帰りなさい。その感じだと、完成したみたいですね」

「おおよそは完成させたぞ。あとは細かいところを詰めるだけだな」

「必要な道具の設置は終わりましたよ。あとは明日、本格的に動かしてみるだけです」

「俺たちが手伝ったからな。心配はいらないぞ!」


 自信たっぷりにデニス親方がそう言った。これはますます見に行くのが楽しみになってきたぞ。


「デニス親方、ニャーゴさん、商人さんがこの町にお店を出してくれることになりました」

「おお、そりゃいいな。いつでも人族の作った商品を見ることができるわけだ。ときどき面白いものを作り出すからな。楽しみだぜ」

「それはうれしいですね。素材の入手が楽になるかもしれません」


 二人からの感触もいいみたいだ。これなら他のエルフさんやドワーフさんたちからも、商人さんの出店は歓迎されるに違いない。町の人たちも、きっと歓迎してくれるはずだ。


「俺たちも店を出すんだろう?」

「そのつもりだよ。ここで物を売るための技術と知識をしっかりと身につけて、隣町にも売りに出せるようになりたいところだね」

「そうだな。そのためには荷馬車が必要だな。馬も用意しないといけねぇ。また作る物が増えそうだぜ」

「よろしくお願いするね、デニス親方」

「任せとけ!」


 デニス親方がドンと胸をたたいてくれた。頼もしいな。きっとすごい荷馬車が完成することになる予感がする。ボクも荷馬車作りを手伝おうかな? 木工所で身につけた技術を、今こそ使うべきではないだろうか。


「あとは隣町から買いに来てくれる人がいるかどうかだね」

「そうですな、隣町へ宣伝してくれそうな人が、この町へ物を売りにくる商人の方しかいませんからね。これは別で、隣町に宣伝をする必要があるかもしれません」

「宣伝か。なかなか難しそうだね。商人さんみたいに、荷馬車に荷物を載せて、隣町まで売りに行ってみる?」

「隣町では指定された場所でしか、物の売り買いはできないようになっております。その場合は売る場所に気をつけなければなりませんな」

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