第151話 商人さんをスカウトする
新しい建物が建つ場所を確認したあとは、そのまま町の中を視察することにした。何か困ったことがあったり、必要な物があったりしないかな?
建築作業を終えたドワーフさんとエルフさんたちはそのまま大浴場へと行くようだ。そのあとは酒場へ行って、みんなで一杯やるらしい。ものすごく楽しんでいるみたいだね。
ルミ姉さんもみんなと一緒に行くことにしたようだ。
「特に何か困っていることはなさそうですね」
アルフレッド先生と一緒に町を見回る。町のみんなは、ボクが最初にこの地へ到着したときとは違い、とてもいい顔をしていた。その姿も小奇麗になっている。きっと定期的にお風呂に入っているおかげだね。
これで町のみんなも、お風呂に目覚めてくれるといいんだけど。
「あ、商人さんだ!」
「これはこれは領主様、アルフレッド様ではないですか。いやはや、この場所もずいぶんと様変わりしましたな。あ、いや、これは失礼」
「気にしないで下さい。ボクもそう思っていますから。毎日、ノースウエストへ商品を売りに来てくれてありがとうございます」
「お礼など必要ありませんよ」
そのまま商人さんのところで売られているものを見せてもらう。商人さんの商品は馬車に並んでいるも物を買うシステムになっているので、ちょっと不便そうである。
そこで提案してみた。
「向こうに、宿屋と商店を一緒にした建物を作っています。よかったら、そこにお店を出しませんか?」
「よろしいのですか?」
「もちろんですよ。こちらからお願いすることになるので、場所代はいりません。食堂も一緒に入ることになっていますので、そこでの食事券もつけますよ」
「そ、そこまでしていただけるのですか!? なんだかこちらの方が申し訳ない気持ちになりますな」
困ったように眉を下げている商人さん。なかなか正直な人のようである。でも、ここは商人さんの特になるようなことを言っておかないと。
商人さんがくるのを待つことなく、この町でも自由に、他の場所から仕入れてきた商品を買うことができるようになれば、ノースウエストはもっと発展するはずだ。
「ぜひ、お願いします。この町に物を売りにきてくれる商人は一人しかいませんからね」
「そうですか。なるほど、分かりました。私の商会から、こちらへ人員を出すことにしましょう」
「ありがとうございます!」
商人さん、ゲットだぜ。これで隣町とのつながりが、ほんの少しだけ太くなったぞ。このつながりを使って、今度はノースウエストから隣町へ商品を売れるようになれるといいな。そうなれば、念願の外貨を稼ぐことができるぞ。みんなのやる気もますます上がるはずだ。
うまく商人さんとの話をまとめることができたボクは、ほくほく顔で屋敷へと戻った。ニャーゴさんはまだ戻ってきていないみたいだね。きっとまだ、錬金術用の部屋の準備をしているのだろう。どんな部屋になるのか、今から完成が楽しみだ。
「リディル様、何かいいことがあったようですな」
「フェロール、隣町の商人がこの町にお店を出してくれることになったよ」
「おお、それは朗報ですな。これでこれまでよりも楽に、必要な物を手に入れることができそうです」
フェロールもうれしそうだね。町の設備は整いつつあるので、次は流通が気になっていたのだろう。
他の町との交流が始まれば、間違いなく問題も起こるだろう。でも、それに余りあるほどの恩恵もきっとあるはず。
その恩恵はボクだけでなく、ノースウエストに住むみんなが受けることになるのだ。町全体で見れば、大きなものになるはずだぞ。
「フェロール、隣町との交流が始まったら、ノースウエストの警備も考え直さないといけないと思うんだ」
「そうですな……町にはデニス殿が作った魔道具を設置しておりますからな。すぐには問題にならないと思います。ですが、将来のことを考えると、自衛団のようなものを作っておくべきかと思います」
「自衛団か」
さすがに兵士を雇うわけにはいかないからね。自衛団と言う名の衛兵をノースウエストにも準備しておくべきだろう。
問題は人手があるかどうかだね。現状では全く足りないと思う。どこかに人手が余っていないかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。