第150話 宿屋と商店を見に行く

 肥料作りが一段落したところで、町の様子を見に行くことにした。アルフレッド先生もちょうど区切りがよかったみたいだね。戻ることなく、この場にとどまっている。

 ニャーゴさんはこのまま錬金術用の部屋の片づけと、引っ越し作業をするようだ。


「それではボクとアルフレッド先生は町へ行きますね」

「お気をつけて。明日には錬金術での物づくりを始められるようにしたいと思っています」

「安全には気をつけて作業をして下さいね」

「もちろんですよ」


 ニャーゴさんや、錬金術用の建物を建てていたドワーフさんとエルフさんたちと別れたボクたちは、町の中心部へと向かった。

 みんながどこに宿屋と商店を建てているのか分からないからね。まずは大浴場で情報を集めることにしよう。


 大浴場には今日も町の人たちが利用していた。無料で使えるということもあり、大人気である。そして町の共有物としてしっかりと認識されているようで、みんながキレイに扱ってくれているようだ。ゴミ一つ落ちていなかった。


「領主様ではないですか。これからお風呂ですかな?」

「それもいいですね。ちょっと聞きたいのですが、この辺りで新しい建物が建っていませんか?」

「ああ、そういえば、向こうでドワーフさんとエルフさんが何やらやっておりましたな」


 おじいさんがそちらの方向へ視線を送った。どうやら大通り沿いに建てているみたいだね。さっそく様子を見に行かないと。


「ありがとうございます。ちょっと行ってきます」

「何を建てているのですか?」

「宿屋と商店を建ててもらっています」

「おお! それは完成が楽しみですな」


 目を輝かせているおじいさん。これからもノースウエストはどんどん発展していくつもりだから、楽しみにしていてね。

 おじいさんと別れ、アルフレッド先生と一緒に大通り沿いを進む。するとドワーフさんたちの姿を見つけた。どうやらあそこみたいである。


「すごい! ずいぶんと大きな建物になるみたいだね。でもこんなに大きくて大丈夫かな?」

「お、坊ちゃんじゃないッスか!」

「ルミ姉さん! なんだかすごい物ができそうだね」


 ボクとアルフレッド先生が来たことに気がついたルミ姉さんがこちらへと駆けてきた。作業も一段落しているようである。今日は土台作りだけにしたみたいだね。

 大浴場の近くに建てれば便利そうなのにと思っていたのだが、これだけ大きな建物なら、この位置じゃないと無理そうだね。


「ふっふっふ、驚いたッスか? これから建てる建物は、宿屋と商店を一緒にした建物になる予定ッス。宿屋に泊まってもらいながら、お店で商品も買ってもらうッス。もちろん、買った商品は部屋でも飲めるッス」


 飲めるって、完全にそのお店でお酒を売るつもりだよね? でも、部屋飲みできるって、ちょっといいかもしれない。周りを気にせずにお酒を飲むことができるからね。それなら一緒におつまみを売るのもいいかもしれない。夢が広がるな。


 作業をしていたドワーフさんとエルフさんたちからも話を聞く。宿屋はドワーフさんたちが、商店はエルフさんたちが担当するようだ。

 一階に食堂や商店が入り、二階から上が宿屋になるらしい。これは完成したら、ノースウエスト一番の大きな建物になるだろうな。ただし、ボクの住んでいる屋敷はのぞく。


 あそこは今も大きくなっているからね。町から少し離れた場所に建ててよかった。町中にあったら、迫力があるっていうレベルじゃないと思う。間違いなく、場違いな状態になっていただろう。町の外から来た人たちもビックリするはずだ。いや、引くかもしれない。


「これだけ大きな商店ができるなら、色んな商品を売りに出すことができそうだね」

「ノースウエストには売れる物が増えてきたッスからね。もちろん青果物も並べるつもりなので、町の人たちが作った野菜や果物も売りに出せるッス」

「それはいいね。町のみんなにも喜んでもらえそうだよ」




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