みんなみんな大好きだよ

灰崎千尋

みんな

 ユウくんと付き合ったのは、みんなの中で最初に「好き」って言ってくれたから。

 いつもみんな優しくしてくれるし、かわいいって言ってくれるからわたしはそれで良かったんだけど、ユウくんはわたしと恋人になりたいんだって。わたしのことが好きだから。じゃあそうしよっか、って。

 ユウくんはとっても嬉しそうで、だけどいつも緊張してた。つないだ手のひらはじっとりしてて、すぐ耳が赤くなって。ついからかいたくなってキスしたら、しばらく喋れなくなっちゃった。楽しかったなぁ。


 だけどタイキが、たまたま二人きりになったときに「なんであいつなんだ」って詰め寄ってきたの。だから理由を答えたら、「僕の方がずっとずっと好きなのに。誰よりも好きなのに」って泣きだしちゃった。

 それが本当なら、ユウくんよりタイキと付き合った方がいいよね。でもどうやったらそれがわかるんだろう。そう思ってゆらゆらしてるうちに、タイキとエッチしちゃった。ユウくんとはまだ一回しかしたことなかったけど、ユウくんより気持ちよかった。タイキにそう言ったら、「いっぱい好きな方が、いっぱい気持ちいいんだよ」だって。

 だからタイキと付き合うことにしたの。

 タイキはユウくんと全然違った。デートとかほとんどしないで、タイキの家でエッチばっかりしてた。そうしてると、たしかにタイキがわたしのこと好きなのもわかる気がした。


 夏に合宿があったよね。OBのトモさんと初めてエッチしたのはあの時。宴会が盛り上がって、タイキは早めに酔いつぶれちゃって。わたしも頭ぐるぐるしてきたなぁ、って思ってたらいつの間にかトモさんの部屋に寝かされてた。

「やばい子入ったって聞いてたけど、本当だったわ。ねぇ、オレ上手いよ。一回やってみない?」

 そう言ってトモさんがキスしてきた。タバコの匂いが苦かった。でもそのまま舌がすごい絡んできて、唾液でべとべとになりながらわたし、少しイっちゃった。そのまま布団の上で、服を脱がし合って。

 トモさんのエッチはすごいの。目の奥がチカチカしちゃって、気絶するくらい。だからタイキとじゃもうだめだった。気持ちよくないってことは、もうあんまり好きじゃないってことだもんね。タイキにはめちゃくちゃ泣かれたけど、なんとか別れた。それからトモさんとたくさんエッチしたけど、「付き合うとかは面倒だから」って、セフレみたいな感じ。


 でも、でもね、わたし出会っちゃったんだ。マヒトくんに。

 新しいバイト先でミスが続いてへこんでたわたしを、マヒトくんは慰めてくれた。「大丈夫だよ」って、頭を軽くぽんってして。それだけでわたし、体の奥からぎゅっと熱くなった。マヒトくんの手のひらのあったかさで溶けちゃいそうって思った。どんなエッチより気持ちよかった。

 だからわたし、がんばったんだ。バイトのシフト合わせて、たくさん「好き」って伝えて、いつもかわいくして。マヒトくんには彼女がいるっぽかったけど、絶対わたしの方が彼のこと好きだもん。キスしてエッチするようになったら、マヒトくんもわかってくれたみたい。

 だからわたし、今とっても幸せなんだ。


 ありがとう。これはみんなのおかげ。

 みんなみんな大好きだよ。

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