一組のカップルの朝の風景なのに、どことなくゾクリとする妖艶な色っぽい空気感がありました。
普段は襟やネクタイで隠れる彼の喉元。寝間着姿だから見える、喉ぼとけ。共に朝を迎えなければ、まじまじと眺める事のないシチュエーションだからでしょうか。
彼女はそこから林檎を想起する。林檎からアップルパイへ。アップルパイを食べる彼の姿を連想し……。
すごく幸せそうなラブラブカップルだけど、年の差もあるようだし、失楽園という単語から微かな背徳感があって、今はそうでなくとも元々は楽園を追われるような禁断の関係のスタートだったのだろうかと想像してしまったり。
短い物語なのに文章が詩的で、行間に読者の想像力がくすぐられ、長く感じられる味わい深いお話です。