第2話


私はねぇ……他者の前で異常に繕おうとして無理してるあんたらが、ずっと昔から心配で、そして、嫌いだったんだ。


 悲しいのに、悲しむのは他人のいない時だけ。辛くて溜め込んだものがあるのに、それを見ないふり。気遣いにエネルギーを割いて、自分の感情は二の次、三の次。


 ……それじゃあ、私が困るんだ。


 私には共感覚って力があるもので。


 文字通り、他人の痛みは私の痛みになるんだ。


 だからね、本当の感情を抑えて「いい人」や「立派な人」をやろうとする人の、心の奥の悲しみが深ければ……その悲しみは私にもくる。


 だから、発散してやんなきゃなんない。


 ……だれも、出さないからさ。


 気を遣って、大人同士の滞りないやり取りをするだろう?


 だから、そこに、私がいる。


 皆の悲しみを引き受けて、皆の代わりに表現する。


 誰かが、表現すれば、それは気づきと許可になって、『そうやってもいいんだ』という印象を与える。


 まったく、感謝してほしいよ。


 私が感情的になるのは、君たちが溜め込みすぎてる影響だってあるんだぞ。

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観察して 鈴乱 @sorazome

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