第24話 光化門見学
予定されていた行事がすべて終わると、新しく編成されたミンギルとテウォンのいる分隊は、連隊として他の隊とまとめられて
街の住民たちが旗を手に歓声をあげて見送る中での行進は華やかで、見目が良いという理由で目立つ場所を歩くことになったミンギルも気分が良かった。
鉄道に揺られる時間が長い旅であったが、各地の駅では青年団や婦人会が冷たいシッケなどを用意して待っていてくれたので、暑い日があってもなかなか快適に移動することができた。
そしていくつもの山々が車窓を横切っていくのを眺めた先に、目的地の
国境での会戦が長引かなかったおかげで華やかな街並みが意外と残っている
(そういえばあのファン家の長男も、
過ぎ去った時代を思い出させる風景に、ミンギルはかつて働いていた地主の屋敷と、その家の後継者であったはずの人物を思い出した。
しかし
ミンギルとテウォンがいる分隊を含んだ列は、今も庁舎として利用されているらしい日帝が建てた巨大な西洋建物の前を通って、
前方を歩く人の群れの向こうに、それらしき建築物を見つけたミンギルは、指をさして目を輝かせた。
「もしかして、あれが光化門か?」
「俺にはまだ見えんけど、多分そうじゃないか」
小柄なテウォンは、ミンギルが見ているものを見ようと背伸びをする。
そのうちに門との距離が近づいて、二人とも光化門を目にすることができるようになった。
勇壮な稜線を描く
門の前を流れる
その橋を渡った先にある門の前の広場は狭く、見学しに来た兵士たちが集まるとすぐに混み合ってしまう。
押し合いへし合いになりつつも兵士たちは、小石で門に名前を刻んだり、あちこちを触って登ったりしていた。
「でっかい門のわりに、ここはなんか狭くないか?」
「橋ももっと立派なものにすれば良いのに」
「言われてみると、俺もそう思う」
同じ分隊にいる三人の兵士も、文句を言いながらも楽しんでいる様子で、門を見上げている。
ミンギルとテウォンは他の三人とは少々距離をおいて、二人で人混みの中で手をつないでいた。
「光化門は、本来は
門の見事な造りとはちぐはぐな素っ気ない周囲の様子の違和感について、テウォンは端的にその理由について説明した。
テウォンの手はミンギルの手に比べるとずっと小さかったが、すらすらと疑問に答える落ち着いた声を聞いていると頼もしい気がして、ミンギルは握る手にほんの少し力を込めた。
「昔の王様も、日帝も米帝も今はもうここにおらんから、こうしておれたちが立っとるわけだ」
光化門を取り巻く風景が侵略者によって捻じ曲げられていることを、ミンギルは別にそれほど惜しいとは思わなかった。古い王国の支配者もただ同じ朝鮮人であるというだけで、おそらくミンギルやテウォンのような低い身分に生まれた者にとってはそれほど良い君主ではなかったはずだからである。
ミンギルのささやかな皮肉に気づいたテウォンは、つないだ手を握り返して微笑んだ。
「確かに俺たちには、王朝時代の威光は必要ないな」
滅んで今はもう意味がないからこそ、憎む必要もなく美しいと思えるものがあると二人が理解したところで、後ろから副分隊長の声がかかった。
「次の人たちのために場所を空けなきゃいけないから、もうそろそろ移動しましょう。他の三人も呼んできてください」
背後には清潔だが印象の薄い副分隊長の姿があって、その隣には腕を組んで黙っているジョンソがいた。
まとめ役をすべて副分隊長に任せたジョンソは、ただ無感動な眼差しで光化門を見つめている。
(黙って立っとるだけで良いなら、おれも分隊長をやれそうな気がする)
嫌味な意味ではなく、本気で自分も出世が期待ができるという意味で、ミンギルはジョンソの仕事ぶりを評価した。
テウォンが他の三人を呼んで戻ってきたところで、七人は今度は
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