第20話 京城陥落の報せ
ミンギルとテウォンが軍隊に入り、二ヶ月ほど過ぎた
朝食後に普段よりも物々しい集会が開かれて、兵営にいるすべての者が司令官の講話を真剣に聞いた。
司令官がそこで話したのは、六月二十五日に国境を越えた朝鮮人民軍の第一軍団と第二軍団が、南朝鮮の支配下にあった
南朝鮮に入った共和国の軍隊は、
つまり朝鮮を代表する正式な国家である共和国と、米帝の手先である南朝鮮の傀儡政権との戦争が、本格的に始まったのである。
長い話を真面目に最初から最後まで聞くことができないミンギルは、その司令官の講話を多めに見積もって三分の一ほどしか理解しなかったが、周囲の動揺と興奮にさすがに何か大きなことが始まっていることを感じ取った。
「戦争って、いろいろ唐突なんだな」
「だって攻撃の時期は直前まで秘匿しとかんと、相手に態勢を整える準備期間を与えることになるだろ」
軍隊に身を置いていても寝耳に水だった華々しい報せにミンギルが小声で驚くと、テウォンは以前よりもさらに難しくなった内容の言葉で返した。
国境で起きていることのすべてを知っていたわけではなくても、テウォンの驚きはミンギルよりも小さいようである。
一方で現実の戦場で起きていることはまだ遠い他人事で、テウォンは本当の兵士としての覚悟をまだ持っているわけではなく、それはミンギルも同じだった。
しかし戦争に従事する者としての実感がない一方で、軍隊に入ってから特に苦労していないミンギルは、自信を持って戦場に赴くその日を待っていた。
(おれとテウォンなら、きっと戦場でも上手くやれるはずだからな)
かつてはテウォンの語る未来を漠然と信じていたミンギルは、今は兵士としての自分の能力も信じている。
自分が戦場で活躍することを、ミンギルは心から疑っていなかった。
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