第7話 秋夕
収穫を終えた秋に先祖に感謝をする
とは言えそれは、祀る先祖と集まる家族がいる者に限った話であり、終戦後も結局使用人と働かされ続けているミンギルとテウォンにとっては、それほど心躍るものにはならない。
ファン家ではソウルの学校に通っている長男の
生きている人が住んでいるものと同じ一軒の建物である
新米を収穫したのも、栗を拾ったのもミンギルとテウォンであるが、
「今の俺たちは死んでも誰も祀ってくれないし、祀るべき先祖もおらんのに、他人の先祖とその子孫のために働いとる」
解放独立から一ヶ月たっても訪れない変化に苛立ちを隠して、テウォンは裏庭で
「お前が死んだらおれが祀るし、おれが死んだらお前が祀ってくれると思うけど、二人とも死んだら確かに誰も祀ってくれないな」
漠然とではあるものの不平等は理解しているミンギルは、テウォンが踏んだ
連綿と続く
しかし信じていなくとも、裕福な人々が持っている楽しげな時間は欲しかった。
「先祖がわからん俺たちが信じられるのは、山にいる
テウォンはそう言って、紅葉でところどころが黄色くなった山を見つめた。
「確かにおれも、何かに祈るなら
ミンギルはほとんど信心深い気分になることはなかったが、漠然と神として思い浮かべることになるのは
四季を通して山の恵みと田畑の実りを見守る
だが
日本人が去れば幸せになれるはずだという人々の期待は裏切られ、解放独立の日からの朝鮮は苦難続きであるとテウォンはミンギルに時折教えた。
連合軍の占領による強制拠出や水害の発生を原因とする混乱によって食料が不足し、疫病が流行してかえって植民地時代より大勢の人が死ぬ。
しかし幸か不幸か、ファン家が支配する村は食料不足や流行り病の影響を受けにくい場所にあったので、ミンギルとテウォンの生活に変化はなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます