4‐2.訪問客
丸太を組んで壁にして、屋根に樹皮を敷いて芝土を載せた土の床の家が、ラーストチカの一家の住まいだった。
ラーストチカの一家は父親が数年前に去って、後は母親と幼い妹たちしかいない。
反対に隣のスーシャの一家は母親が十年ほど昔に亡くなっているので、父親とスーシャと、その兄弟だけがいる。
男手が足りないラーストチカの家と女手の足りないスーシャの家とで、お互いに足りないものを補うように仕事を任せ合っているので、二つの家は非常に親しく暮らしていた。
だから雪が止んだ今日もまた、スーシャはラーストチカの家に来てくれて、雪下ろしを手伝ってくれた。
滑らないように薄く雪を残した屋根の上に立ち、スーシャはシャベルですくった最後の雪の塊を落とす。
「こんだけ下ろせば、とりあえずは大丈夫だな」
「うん。これで終わりだね」
ラーストチカは屋根に渡した梯子を支えて、頷いた。
凍りそうなまつげの向こうに見上げた空は、白く冷たい雲に覆われていた。
「雪が降っては下ろして、冬はその繰り返しだな」
スーシャは梯子で降りてきて、白い息をつく。
(やっぱりスーシャといても、楽しくはないな)
ラーストチカの方は心の中で、つぶやいた。
冬は元々退屈な季節なのが、スーシャが何かを言うと余計に面白くなくなるような気がする。
邪魔にならないように下ろした雪を固めて寄せ、ラーストチカはスーシャに背を向けて言った。
「あとは母さんが、お礼に蜂蜜湯を用意してるって」
蜂蜜やジャムをお湯で溶かしてスパイスを入れた蜂蜜湯は、この土地ではおなじみの冬の飲み物である。
ラーストチカは母親の作る蜂蜜湯が嫌いだが、スーシャはわりと好きらしかった。
だからスーシャは、ラーストチカの言葉を聞いて少し嬉しそうな顔になった。
しかし外の雪で遊んでいたラーストチカの妹たちが走って戻って来たので、その返事は遮られた。
「おねえちゃん、このいえに、ばしゃがきたよ」
ラーストチカの足元に勢いよくまとわりつく小さな妹たちは、何らかの来客を告げに来たらしく、口々に言いたいことを言った。
「えらいひとがのってた」
「りょうしゅと、そんちょうだよ」
「スーシャはかえらないと」
その要領を得ない言葉から、ラーストチカはなんとか必要なことを聞き出した。
「領主と村長が来たって。何の用だろう」
ラーストチカは顔を上げて、スーシャに話しかけた。
領主は年に数回は見かける機会がある人物だが、わざわざ村長と一緒に家を訪ねてきた理由はわからなかった。
「何にせよ、俺は帰った方が良さそうだ」
スーシャも不思議そうな顔をして、ラーストチカの妹たちが走ってきた小路の向こうを見た。
その森を切り開いた狭い道では、毛皮の外套を着た小太りの領主と白い髭の領主が、馬車を降りてこちらに歩いてきていた。
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