第79話𓂧𓍯𓎡𓍢𓉔𓄿𓎡𓍢〜ある男の独白〜

 メリモセという男をご存知ですか?

 ええ、かつてイシス様の神官だった男です。

 彼は死んだ。ええ、死んだ事になっています。でも彼は生きているんですよ。正確にはんです。


 どうしてあんな男が神へと転生したのか皆目見当がつきません。神のお考えは人間には到底理解できませんね。


 いえ、そんな事はどうでもいいんです。問題なのは彼のその趣向ですよ。


 彼は生前、ある少年に恋心を抱いていました。初老の男が少年に、ですよ?

 気色が悪い、と言えば言葉が過ぎますが、とにかく、私はある時その男の気持ちに気づいてしまいました。


 当時オシリス様の侍従であった私は見てしまったのです。ベッドに横たわるアヌビス様を見つめる彼の瞳。それを影から見守っていた私はそこから動けなくなりました。


 彼はその頬にキスをしようとしていたんです。私はあろう事か手に持っていた食器を落としてしまいました。訳もわからず逃げる私を彼は必死に追いかけ、そして懇願しました。


 誰にも言わないでくれと。

 私は頷きました。けれどその光景が頭から離れず私は眠れぬ日々を過ごしました。


 彼はアヌビス様をそういう目で見ていたんですよ。穢らわしい獣のような目で。


 私は神官という立場でありながら、彼に対して邪な感情を待っているあの男に激しい怒りと嫌悪を覚えたのです。


 ええ。だから殺そうと。


 一体どんな気分なのでしょうね。神が人間に屈服させられるというのは。

 

 

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