ショートショート・『電信電話』

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（これは、今日の「電信電話記念日」にアメブロに投稿したものです）

（筒井康隆風のショートショート…）

　「…えーーー本日はお日柄もよく、ここに、めでたく、宮沢家、清田家、ご両家の結婚式を執り行う運びとなりました。わたくしは、司会を務めさせていただく〇モリでございます。」

（万雷の拍手）

「わたくしは、よくイグアナの物まねをしますが、爬虫類ではございません（笑い）　イモリ、ヤモリは両生類ですが、親戚ではないです。どちらかというと、ヒキコモリです（笑い）

　冗談はさておき、結婚は人生の墓場とか申します。わたしも40年前に結婚をして、やっぱりその後はハカバかしくない人生行路でした（笑い）

　ばかばかしい人生よりも、ばかばかしいひと時がうれしい…これはなかにし礼ですね。さっきのことわざを言ったのは、調べてみると、ボードレールという詩人で、もともとは「墓のある教会で、体を清めてから結婚しなさい」そう言った言葉が間違って伝わったそうです。

　まあ、たいていの人はゴールとか、ハッピーエンドが結婚と、そういう方が庶民感情ですよな？

　ですが、お二人にとっては、今日が新たな生活のスタートとも言えますね。

　末永くお幸せに、前途に幸あれ、と祈らずにいられません…

　では、これにて、結婚式を終了させていただきます。

（〇モリ、帰るそぶりをする。脇から親戚が現れて、引き留める。大爆笑）

　いや、早く帰りたかったもので。（笑い）

　それでは、いただいたお祝い電報を読み上げたいと思います。

　最近は、電報を打つのは祝電くらいになりましたな…

　「カネオクレ」という電報が、昔は学生の定番でしたが…普通はホーボーの人が言う言葉ですよね？ホーボーの3割はチエオクレだそうです（笑い）ほーぼーにだけはなりたくない！ごめんだー（笑い）

　「ケッコンオメデトウ、フタリノコウフクヲイノル　ナイカクソウリダイジン　ヤマダタロウ」これはいたずらかな？（笑い）

　「カショクノテンニ　オイワイモウシアゲマス　　シュウカンシンチョウヘンシュウチョウ　スズキダイチ」

　「テイコクホテル？　マーリッチ！　アヤノコウジキミマロ」

　「ショウガイイチドニシテクダサイ　オイワイキンガタイヘン　シミタレイナ」

　「イチニチモハヤク　ハネムーンベビーヲネ　ダイオウセイシシャチョウ　オウジタツオ」これはおむつのメーカーですね（笑い）

　「ケッコンオメデトウ　イエスガトモニアリマスヨウニ　センパクシンコウカイカイチョウ　ソノアヤコ」

　「コングラチュレーション　アサップニリコンシナイデネ　ユウジンダイヒョウ　ウタダヒカル」

…以下省略させていただきます。

…身体に障害があるために式を欠席しておられる、新婦の美沙子さんのお父様より電話が入っております。

　美沙子さん、お話しください。

「美沙子？美沙子か？、もしもし、お父さんだ。式に出られなくてごめんよ。おれも本当に残念だがね、知っての通りにおれは事故で脊髄を損傷してから寝たきりだ。お前の花嫁姿を見られないのは痛恨の極みだ。だがね、幸いにテレビ電話でお前の顔や声やウェデイングドレスの白い綺麗なラメや絹の手袋は見えるよ。美しく育ってくれてありがとう。本当に今日のオマエは人生で一番輝いている。本当におめでとう。どうか幸せになってくれ。父さんがいなくても明彦君と二人で幸せになってくれ。本当におめでとう！」

　　…”稀代のおしゃべり”の〇モリ氏も、感動して何も言えなくなり、ひたすらハンカチを使っていた。

　　美沙子も、美しい大粒の涙を流し、出席者も皆もらい泣きをしていた…

　晴れの結婚式に花を添えた、テレフォンとテレグラムの、今日はその記念日だった…

＜了＞