第25話 狙撃

「……………寿々江さん、もう一度露天風呂入りませんか?」


二回戦が終わってまどろんでから、誘ってみた。


「私は構いませんが?どうしたのですか?」


「いや、今から内風呂用意するよりも、まだ掃除してないだろうから手間が省けるかなと思って。」


「ふふっ、相変わらず日向さんは優しいのですね。もっと汚すかもしれないって事ですよね?」


そんな事は、無いんだけどな。開放的な気分でもう一度ヤリたいだけなんだよな。


「まあ、そういう事にしておきます。」


「では、改めて用意させますね。念の為に確認もさせておきます。」


そう言って寿々江さんはスマホアプリでコンシェルジュを呼び出して指示出ししてからベッドから降りて立ち上がり、タオルで股間を拭ってからバスローブを羽織る。


「すぐに使えるそうです。行きましょう。」


促されて僕もバスローブを羽織り、寿々江さんの後に続いて先程の露天風呂に向かった。


「……………寿々江さん、いつもの得物、持ってますよね?」


「?ええ、いつものでしたらソコに。」


露天風呂前でバスローブを脱ぎ捨て、湯に浸かる前に寿々江さんに確認して。


「正面外は見ないように。一時の方向五十メートル、三本立つ木の左の枝の上、銃を持った男と真ん中の木に観測手と思われる女がいます。」


寿々江さんは不自然にならないように動いて、観測手から死角になる位置にバッグを寄せお目当ての得物を二つ取り出して一つを僕に渡してきて。


「狙撃手は僕がやります。寿々江さんは僕が射ち漏らしたら狙撃手を、倒せたら観測手をお願いします。一度しかチャンスは無いでしょう。」


寿々江さんは無言で観測手の死角になるであろう露天風呂の外側の辺りに寄ってから僕の合図を待つ。僕は得物を力一杯引き絞ってから鉄球を撃ち込み結果を見ずに姿を湯船の壁に隠し、寿々江さんに合図を出して。

寿々江さんは観測手の方向へ撃ち込んでいたので、ぼくのスリングショットは狙撃手へ命中したのだろう。慎重に狙撃手のいた木の枝上を見ると、その木の根元に不自然に首が傾いだ男が落ちていて、観測手は同じく木の根元で頭から落ちたのだろう、ピクリとも動かずに倒れていた。

実戦でこのスリングショットを使ったのは初めてで。有効射程が五十メートルと聞いていたけど命中すると結構な威力なんだなと思っていたら、騒ぎを聞きつけたスタッフが飛び込んできて。


「銃声がしましたが何が……………ぁ」


全裸で外に向けてスリングショットを構える僕らを見て固まる、別荘の管理スタッフ。


「あ〜、すぐに爺さんに連絡取って、アソコに倒れている奴らの背後を探るように頼んでくれ。連絡員くらいは近くにいるだろうから、潜んでるか逃げだしたかも至急確認して。あ、警察呼ぶのは無しで。」


どうせ対立した警察関係者の逆恨みだろうけど、旧共産圏のライフル銃を持ち出すのはまともな組織じゃ無いだろうからな。腕もポンコツだったしな。スリングショットで撃たれたくらいで的を外すようじゃ暗殺者として不合格だろうし。僕を掠めた弾丸は、真後ろの壁を貫通して部屋の壁に穴を開けていた。

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キスまでなんだからね!偽恋人な幼馴染みの様子が、近頃何だかおかしいんだが? じん いちろう @shinn9930

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