part Kon 12/07 pm 5:50


 

 ……プルルルッ プルルルッ プルルルッ。



 どこか 遠くで インターホンの鳴る音が聞こえる。



「あっ ハイ。大丈夫です。はい。終了で…」



 亜樹が チラッと こちらを見ながら 応対してる。

 だんだん 意識がハッキリとしてくる。


 

 ……そう。

 ここは 藤浜のカラオケボックス。

 



 あれ?

 亜樹と話してたんじゃなかったっけ?

 

 ……いや。

 あれは夢? 

 亜樹に……信じられないくらい イジワルな亜樹に あたしの 一番奥のどーしようもなく ダメで 淫らな部分を 剥き出しにされて それでも 大好きって言ってくれて『こらえ性のない スケベな牝犬です』って 服従を誓う…って 夢を見た。

 そして あたしの一番好きな 四つん這いスタイルで 後ろから 亜樹の指と舌で 何度も何度もイカされる あまりに リアルな夢。


 不安になって ささっと 身体をまさぐるけど ブラウスは はだけてないし 下着も ちょっと濡れてるけど ぐしょ濡れってことは……ない。

 

 ……大丈夫だ。

 

 あれは 夢。


 

「……あたし 寝てた?」


「うん。15分くらいかな…。もう 終了10分前って連絡あったから 終了にしといたけど 大丈夫?」


「うん。ありがと」



 亜樹は いつもの優しい笑顔。

 その亜樹が あんなにサディスティックにあたしを 虐めて それに涙 流すほど悦んじゃうとか 夢とはいえ あたしも つくづく変態だな…。

 前 夢に出てきた亜樹は チンチンついてて 処女奪った挙げ句 中出ししたしな……。

 けっこう 病んでんな……あたし。



 ソファーから 立ち上がろうとして ふらついて バランスを崩しかける。

 サッと 亜樹が 支えてくれて コケたりは しなかったけど 腰に力が入らない感じ。



「大丈夫? 一人で歩けなかったら ボクが 支えるけど…」


「ごめん。大丈夫 大丈夫。ちょっとバランス崩しただけだから」



 亜樹には そう言ったけど ちょっとフラフラする。

 カラオケで 寝ちゃってたみたいだし かなり 疲れてんのかな?


 そもそも カラオケ入ってからの 記憶がない。

 夢の方は 鮮明に覚えてるのに……。



 

 桜橋に帰る電車の中でも 全身が なんかダルくて ボーッとした感じ。

 もしかして 熱 あるのかも…。


 今週から 試験だし その後は 春高に向けての特訓。

 体調崩してる場合じゃないハズだけど どうにも 考えが まとまらない。


 

 さっき見た リアルな夢のことが 頭の中を グルグル回ってる。



 ……でもな。

 あれが ホントだったハズはない。

 だって 亜樹は いつも通り。


 ……いや。

 いつも通りでも ないか。

 あたしが ボーッした様子なのも 気にならないみたい。

 モードで こないだTVで見た 美術展について 嬉しそうに語っている。

 ゴメン。

 生返事しかできない感じだわ…。



 

 菊野井駅に着いて 席が2つ空く。

 だいぶ 弱ってるし 座れてラッキー。


 ところが 亜樹は 座らない。


 

「座んないの?」


「あー いや。ちょっと 今日は 立ってたいんで…」



 例によって 電車の中では あきちゃん喋り。

 ちょっと 顔を赤らめて 口の中で ゴニョゴニョ言ってる。

 

 なんだろ?

 でも 上手に 思考が回らない。


 ホント 疲れてるみたいで 座ったら うつらうつら……。


 

 亜樹に起こされて桜橋。

 


 何が どーなってんのか よく わかんないんだけど どーやら 今は 6時半ごろみたい。

 時間の感覚も おかしくなってる。


 

 いつもの 国道を あたし 亜樹 自転車の順で歩く。



 信号 渡って 家の裏口の前まで 亜樹が送ってくれる。


 この後 隅っこで キスして お別れかな?

 そんなことを ボーッと考える。


 

 キスしたいって 今日は思ってたハズだけど 結局 したんだっけ?

 記憶が曖昧で 思い出せない。


 夢の中では いっぱいした。

 

 あたしの誰にも触らせたことのない秘密の場所にも 亜樹がいっぱいキスしてくれた。

 亜樹の柔らかな唇が 膣口に押しつけられた感触が甦る。

 ヤバいほどリアルに。



「キスしよ」



 亜樹を 暗がりに誘う。

 例によって あたしが 少し身を屈めて 唇を合わす。


 亜樹が 腕を首に回してくる。


 ……バカ。

 そんなことしたら もっと 濃厚なヤツしたくなるじゃん。


 って思ってると キスをやめて 唇を あたしの耳に近づけてくる。



「……今日 とってもカワイかったよ。ねぇ アレ 聞かせて?」



 いつもと違う 低くて冷たい声。

 そしてクスクス笑い。

 

 状況を瞬時に理解して 膝の裏がガクガク震える。

 

 ってゆーか ホントは わかってた。

 強烈過ぎて 現実感なかっただけ。

 夢じゃなく やっぱ 本当に起こったこと。

 

 マジにやっちゃったんだ……あたし達。


 カラオケボックスのソファーに 犬みたいなカッコで押しつけられて ガチイキしてるとこ さらに苛められて……。

 そこまでは 覚えている…。

 きっと あの後 気絶するまで イカされ続けたんだ…。


 

 亜樹の指が 下着の布越しに あたしの一番 敏感な場所に触れたかと 思うと グリグリッと 指の腹で乱暴に弄る。



「――――ンンッ」



 電撃みたいな快感に 腰骨が砕けそうになり 思わず 亜樹にしがみつく。

 ってゆーか たぶん 軽くイッた…。


 亜樹は あたしの体重を 支えながら 頭をナデナデしてくれてる。

 



「……あぅぅ。亜樹…。 好きぃ……」


「うん。ボクも 瞳のこと 大好き」



 イジワルモードは もうおしまい。

 いつもの優しい声で『好き』って言ってくれる。

 頭 ナデナデしてくれてるのも スッゴい幸せ…。

 これはこれで 身も心も とろんと蕩ける。

 

 

 しばらく 幸せに浸って しがみついてた。

 でも いつまでも 抱き合ってるワケにもいかない…。

 

 亜樹が しゃんと立たせてくれる。

 寂しいけど たぶん 今日は これで お別れ。


 自分から サヨナラ言うのは 寂しいから 亜樹を じっと見つめる。

 亜樹も あたしのこと 見てるけど なんだか モジモジしてる。


 なんか 言いたいことあるけど 言い出せない感じみたい。


 なんだろ?


 もしかして『今日 家に 親 居ないから…』とか言われちゃったら どうしよう…?

 

 無断外泊なんかしたら パパとママに マジに殺される。

 

 けど 断る選択肢なんてない。

 だって あたし 亜樹の奴隷だし。

 

 なんと言っても あたし自身が それを望んでる…。

 亜樹と一晩過ごせるなら パパに何発 殴られても ぜんぜん 平気。


 

「言いたいことあったら なんでも言ってね?」



 ドキドキするけど サラリと聞く。


 

「あー あの…… えっと…さ。あの その パンツのことなんだけどさ…」



 パンツ?

 あたしのショーツが ナニ?

 もしかして さっき触ったときに なんか気がついたのかな…?


 さっきまでのドキドキとは 違う方向でドキドキする。

 なんか ヤバかったのか…。



「今さ 瞳が 穿いてるパンツ 実は ボクのなんだよね…」


「えっ? ナニそれ?」



 意味 わかんなくて 混乱する。

 亜樹の特殊な性癖なんだろうか?

 確かめたいけど まさか 路上で スカート捲るワケにも いかない。

 さっきまで ぜんぜん 気にならなかったけど 腰回りが 落ち着かない。



「あのさ…。ソファーで寝てたとき パンツ穿かせてあげようって思ったんだけどさ…。かなり濡れてて スカートまで染みそうだったし。ちょっと コレは 穿かせらんないなって…。でも 瞳のスカート 丈短いから 穿いてないと 見えちゃうかも しれないし…さ。…それで ボクの穿かせたの」



 ナニそれ?

 それって かなり恥な状況。

 いや 見られたとか そーゆーのは もっとスゴいことしちゃってるワケで…。

 いいっちゃ~いいのかも しんないけど…。

 

 だけど でも やっぱ かなり 恥ずかしい。

 顔が 赤くなるのが わかる。



「そっ そうなんだ…。ごめん。ありがと」


「うん。ボクの方が 丈長いから 立ってたら たぶん 見えないと 思ったし……」



 そう言って 亜樹は 目を逸らして 赤い顔。

 

 ……えっ? ナニ?

 予備のショーツとかじゃなくて 穿いてたヤツを 穿かせてくれたってこと?


 ……マジか。


 ってゆーか 今 亜樹 ノーパン?



「……あの 瞳のパンツ レジ袋に入れて カバンに入れといたし。ボッ ボクの パンツ べっ 別に いつでも いいんだけど 返してくれたら 嬉しいかも……。じっ じゃあ もう 遅いし 帰るね…。また 後で 電話するから…」



 そう早口で 言い終わると 亜樹は 自転車に跨がり あたふたと帰っていった。

 スカート 風で捲れなきゃいいけど……。


 

 あんなに優しくて イジワルで あたしのこと 身も心もメロメロにしたクセに 亜樹って やっぱり なんか おバカ。

 Yin&Yanの横の坂道を上っていく 背中に小さく手を振った。


 ………。

 ……。

 …。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る