キミの声を聴かせて? カラオケデート

part Aki 12/07 pm 3:47


 



 終礼と ともに学校を飛び出し 公園東口へ。

 冬の風が冷たいけど 天気は上々。今日は 久しぶりの〈学校帰りデート〉。ってゆーか 付き合い始めてからでは 初めて。藤浜駅前のメガカラでカラオケデートだ。

 小さい頃から歌好きだったボクだ。もちろん カラオケも大好き。なっちゃんとか友達とも行くし 聖歌隊の打ち上げとかでも行く。ヒマなときは 1人でも行く。それくらい好き。はるなに『いい加減 マイク離しなよ』って怒られたりもするけど たいていの曲なら サビのハモりパート歌ったりして 盛り上げたりもできる。瞳に ちょっと いいとこ見せる絶好のチャンスなのに なんで 今まで思い付かなかったのか?

 ……まぁ いい。今日のカラオケに向けて 一昨日は 自転車でメガカラ 桜橋店まで 行って 予行演習もしてきた。T-GRO の曲はもちろん 普段なら 絶対 歌わないであろう〈HAL&TELL〉の曲も 何曲か練習した。準備は 完璧だ。瞳 喜んでくれるといいけど…。



 予定通りに星崎行き急行は 15時47分に藤浜に到着する。毎日 乗り換えしてる藤浜駅だけど 降りることは あまり無い。待ち合わせは北改札。標示を確認して 北改札を目指す。


 ……いた。


 大きなカバンに 黒ジャンパー。暗紅色の長マフラー。瞳に間違いない。



「お待たせ。待たしちゃいました?」



 ダメだ。制服着てると どうしても〈あき〉喋りになる。



「ううん。今 来たとこ。さっきまで 図書室で勉強してた」


「カラオケ 楽しみです。行きましょ?」


「……うん。そだね」



 いつものように 手を差し出すけど 瞳は 手を握ってくれない…。…なんで? 瞳の顔色を窺うけど 特に怒ってるとかでは なさそう。いつもより 心なしか お化粧 濃いめかな? ボクと会うから 少しだけ気合い入れてくれてる感じ。なんだろう? ちょっとソワソワしてる感じがする。


 周りを見渡し なんとなく 察しがつく。この時間 藤浜駅の改札辺りには 藤工生の姿が チラホラ。きっと 瞳の顔見知りとかもいるんだろう…。そーゆー子に 見られたら恥ずかしいのかな? 傍目には〈女の子同士〉にしか 見えないと思うんだけど……。まぁ 気持ちは 分からなくはない。ボクも なっちゃんの前で 恋人繋ぎしてるとこ 見られたら照れくさいしな…。



「行こ?」



 ……ふぅ。

 やっと ボクらしく喋れた。ちょっと強引に手を繋ぐと 歩き始める。瞳は 一瞬 身体を硬くするけど ボクの手を握り返して ついてきてくれる。やっぱり 怒ってるワケじゃなさそう。ボク達は 恋人同士。照れくさくはあるけど 恥ずかしがることは ない。


 駅前の国道を渡り 駅からもよく見えてる青色のメガカラオケスクエアって看板がついた雑居ビルを目指す。居酒屋の横にあるエレベーター。3 4 5階が メガカラらしい。3Fのボタンを押し受付へ。エレベーターの中でも 瞳が ぎゅっと力を入れて 手を握ってくれてる。なんか いつもより手が 熱い気がする。それに さっきから 瞳は 黙ったまま。機嫌は 悪くなさそうなんだけど なんだろう?



「瞳 体調 悪い? 大丈夫?」


「えっ? ううん。別に 大丈夫。なんで?」


「なんか いつもより 手 熱いし…」


「マジで?」

 


 それに なんか黙ってるしって 言う前に 慌てた様子で 瞳は 握ってた 手を振りほどくと 掌を スカートに擦りつけてる。変なの…。


 



 受付に到着。平日の午後だから かなり割安。一昨日は 休日料金で 1時間でも そこそこの値段だったから ありがたい。


 

「瞳 機種 こだわりとかある?」


「いやぁ 特に」


「了解」


 

 なら 断然 Cyber-sound。新譜の配信は 他機種と変わんないけど キーやテンポの変更が細かく設定できて ボク好み。受付を済まし ベンダーでジンジャーエールをコップに注ぐ。瞳は レモンスカッシュ。階段で 4Fに上がり 413号室へ。



 おや?

 薄暗い室内は 想像以上の狭さ。2畳あるかないかの室内に カラオケ機器と2人掛けのソファー それと 小さなコーヒーテーブル。とりあえず 奥のハンガーにボクのコートと瞳のジャンパーを吊って ソファーに座る。ソファーも けっこう小さいタイプで ちょっと窮屈かも。まぁ 恋人同士だし ある意味では いいかもだけど…。


 

 ……って 薄暗い部屋で 恋人と2人きり。

 コレって もしかして キスくらいしちゃっても いいのか? ……いや 薄暗い場所にきたら いきなり そーゆー考えになるってゆーのは いかにも 品性が低い感じがする。本能 剥き出しって感じ。軽蔑されそうな気がする…。

 …でも こないだ 別れ際に もっとキスしたかったって言ってくれてたし。


 

 いきなり 降って湧いた キスのチャンスに 思考は千々に乱れてしまう…。

 ……違う そうじゃない。


 

 大事なのは ボクじゃなくて 瞳の気持ち。

 瞳は どんな様子だろう? それが大事。瞳は カラオケのリモコンを操作中。手慣れた手つきで 演奏曲を予約してる……。って ええっ? 画面を見ると もう すでに 5曲も 予約が入っている。あれれ? 交互に曲入れるんじゃないの? JーPOPの有名人気バンドの曲で 知ってる曲だけど。でも ボク 歌いたいとか 別に言ってない。ってゆーか 上から順に入れてるのか? って思う間に 6曲目。スピーカーからは アップテンポのロックチューンがかかり始めている。スゴく有名なバンドだけど 瞳がファンだなんて知らなかった。いまいち状況把握が追いつかなくて 混乱する。まぁ なんにせよ マイクだ。マイクを取ろうと立ち上がりかけたところで 瞳に腕を掴まれる。



「キスしよ?」



 ……えっ?

 って思う間もなく 唇を塞がれる。舌絡ませて ディープキス。少しミントの刺激。舌で舌を味わう感覚に 思考を全部 持っていかれる。初デートのときは 唇同士 触れただけ。悪くないけど この 圧倒的な愛し合ってる感とは 較べるべくもない。一度 唇を離し 体勢を入れ換える。



「瞳 大好きだよ」


「あたしも 好き。大好き…」



 もう一度 唇を合わせる。今度は ソファーに膝立ちになって 瞳の上から 唇を重ねる。舌を滑り込ませ 瞳の口腔なかを征服していく。瞳に対して 優位に立ったような 危うい錯覚。でも それも 瞳の右手が ボクの左手を包み 紺色のブレザーの下の 柔らかな膨らみに誘導するまでだった。

 

 ボクの手に余る 豊かな膨らみ。コレって 触っていいってゆーか『触って欲しい』ってことだよね? 頭に血が昇って正常に思考できてるかどうかさえ分からなくなる。心の余裕もデートプランも全て吹き飛ぶ。ブラウス越しに 伝わってくる 瞳の肌の温もり。ブラのカップと 乳房の柔らかな感触。こないだ触ったときは バレない程度にって軽く触れただけだったけど 今日は 指に力を入れて 乳房の柔らかすぎる弾力を掌 いっぱいに感じる。いつしか ボクはキスを止め 瞳のオッパイに夢中になっていた。恋人のオッパイを触るのは 初めてだけど 女の子の胸を弄るのは 初めてじゃあ……ない。もう少し 力を入れても 痛くないハズ。グッと 指を乳房の奥に押し込み 揉みあげる。乳首のコリッとした突起が 掌の中央を押し返す。そこの部分を指で挟み 少し強めに刺激してあげる。瞳のくぐもった喘ぎ声が ボクをさらに 興奮させる。……瞳 感じてくれてる。そう 思うと 息が苦しくなるほど 呼吸が速くなり 鼓動が 他の全ての音を掻き消してしまう。

 


「んんっ……亜樹 上手。気持ちいいよ…」



 ちょっと上擦ったような 掠れたような瞳の囁きが 耳元で聞こえた。今まで聞いたことのない 艶やかな声。ボクの中の 最後の理性が弾け飛ぶ。 目の前が一瞬赤く血の色に染まりアドレナリンが吹き出すのがわかる。 次の瞬間には 瞳をソファーに押し倒し 胸を思いっきり揉みしだき 首筋にむしゃぶりついていた。


 そして…。

 ――そして……。

 ――――そして………。


 ………。

 ……。

 …。

  

 

            to be continued in “part Kon 12/07 pm 4:12”







 

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