ダウンな朝に祈りを捧げよう

 目が覚めたらお腹が痛かった。


 本当を言うと起きるずっと前から違和感はあったけど、僕は眠りを優先した。


 目覚ましのベルが気分を憂鬱にする。今日もまたに出かけないといけない。


 生活の糧という名の少しばかりのサラリーのために、僕は健康と心を消費している。


 業績という名の利益の話が、ひたすら繰り返されるその場所で、僕は酷く場違いな存在な気がした。


 嬉々として売上ノルマの話をする同僚達にとって、そしてそれはこの世界にとっても、重要で大切なことだというのはわかっている。


 だけど僕は、そんな猛スピードで過ぎていく世界が、いったいぜんたい何処に向かっているのか、ほんの少しばかり不安になる。


 マルクスもアダム・スミスもよく分からないけれど、今の世界には恐らく見過ごせないディスオーダーがいくつか存在していて、だけどそれはきっとわざと見過ごされていて、いつか取り返しのつかない何かが起きた時には責任の所在を巡って、盛大な殴り合いの大騒動になるんじゃないかって不安になる。


 そんな世界の末端の角部屋の窓際が僕の定位置。


 それでも僕がなんとかその席にしがみついて胃腸を患っているのは、隣で寝息をたてる君がいるから。


 子どもみたいにスヤスヤ眠るくせに、裸の肩がたまらなくセクシーで、僕は思わず優しい顔になってしまう。


 君はいつも僕に「いつでも辞めて山に住もう。今は狩猟と採集の時代だよ」なんて言うけれど、君が長生き出来ないリスクを僕は毎回承知しない。



 だから今日もダウンな朝に祈りを捧げよう。



 僕が戦場から帰ってきた時に、君が笑顔で迎えてくれますように。

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