世界の終わりと雪うさぎ




 五歳くらいのときの記憶


 あるかなきかの記憶


 朝の玄関から母さんの声


 うれしそうに呼ぶ




 外に出るとそこは


 終末の白い世界


 幼心の僕は絶望する


 きょうで世界は終わりか




 そうあきらめると


 ――雪がいっぱい降ったねえ


 ――これ見てみなよねえ




 かがんだ母さんの足元に


 小さな雪うさぎ


 あの雪の日に僕は世界の終末と


 自然のきまぐれと創造を知った




 不器用な雪うさぎ


 臆病に白く縮こまる


 小さなからだに前を向く目


 母さんはそれを見せてくれた



 きっと



 いつでも足元にいる


 世界を救う雪うさぎが


 ひとに伝えたいと願えば


 ひとに触れたいと願えば


 終わりをはじまりにできる



 きっと



 真っ白な絶望の日がなんど来ても


 足元に雪うさぎが縮こまっている


 それに触れればまた歩きだせる



 きっと

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