水玉と青いサカナ【詩のようなもの】

浅里絋太(Kou)

水玉と青いサカナ

とうめいな水玉は

ポプラの若葉よりこぼれ

光をふくんでおちてゆく


まるい目の

サカナみたいなやつも

空気をかきわけてきて


とうめいな水玉は

おちてゆくことも考えず

風をあびておちてゆく


その一瞬が

永遠であったらいいのに

なんて想いながら


きのうは母と手をつないで

小学校の入学式へ

光りかがやく桜並木のしたをいった


だとしたら

だとしたらきみを見つけて

結婚式をしたのは数刻まえか

ははッ、夢のようだな


葉をはなれた水滴のごとく

おちていってしまうよ



おちる……

やっぱりいやだ

いやだ……

おちるのはいやだ

いやなんだ


お願いです神様神様!

聞いてください!


もうすこしだけ時間をください

わたしだけ特別に

お願いです

お願いですから……

わたしは特別不幸だったんですよ

しっているでしょう

だから、お願いです

もうちょっとだけ時間をください

お願いです

お願いですから……



水玉は地面におちて

ちいさなしみになって

また天に還ってゆくよ


緋色の記憶がたたみこまれた


水玉は地面におちて

ちいさなしみになって

また天に還ってゆくよ


きみにであったこのいのちも

まぼろしになってゆくよ


とうめいなサカナはやさしい

あいつだけ明晰なのだ

みんな哀しい夢をみているのに


青いサカナのやつが

わたしたちをみちびく

暗闇のみちで惑わぬように

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