薄皮のめくれたふち

ハローようこそ、この異世界に!

世界を救うためにさあ

武器をとりましょう


武器はいやだって?

いいよ、魔法だって

魔法ならもうすぐそこに


それは、水たまりの裏にかくれている

呪文なんて必要としない

きみが手をのばせばそこに


魔法は、薄皮のめくれたふちよりきたる

幾重もの絶望の奥底に

冷酷なアスファルトの裏に


きみよ、この見知らぬ世界でひとり

枯れた指先は風に溶け

星を求めて爪はがれ


きみよ、それでもなお踊るがいい

氷のうえをくるくると

日々をすり減らし



退屈でサイテーな世界

死んだ墓石かポストみたいな世界

そうなんだよ

そうなんだって

自分なんて信じられない

疑うことしかできない

昨日は善人、きょうは悪人

武器があったらあったで

殴りあいのどつきあい

お上品このうえなくね

ふん、じゃあ正義っぽい悪がふつうだとして


なんべんもなんべんも

厚い仮面をむいていけば

幼顔のきみが泣いているね

こんな世界は知らない

わたしの世界なんかじゃないって

ざまァwww

ところがドッコイ、これが世界ってもんで

サイテーのサイテーで残念でしたーww


でもさ、かわいいんだねきみの

その泣き顔ほど美しいものなど

涙ほど魔法に近いものはなくて

すべては満ちてゆく

稀有なる幸福のまえぶれに

涙が六たび落つるがごとく

約束などされてはいない

報われぬと知りてなお求めるなら



魔法は、薄皮のめくれたふちよりきたる

鉄とコンクリートをうがつ

恐れぬまなざしの先に


雨風は、狂おしく吹き荒れ

船底は暗礁に割れて

血と涙の夜を捧げたとて


きみよ、目をつむってはいけない

世界は裏切り暗闇に嘆くとも

ふるえる頬で透明な手をのばし


きみよ、もっとも澄んだ心の夜に

いつか風をつかむのならば

その手をそっと開いたとき

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