第5話 謎の2人

 食事を終え、自室に戻る。適当に時間を潰し、就寝する



………

 大型ショッピングモール。休日とあり沢山の家族連れで賑わっていた。しかし


「きゃああぁぁー!」

 誰かの悲鳴があがった。そして血飛沫が上がり人だった物が舞った。

 その中心部に居たのは黒い大きな人だった。赤い目、鋭い牙と爪、丸太の様な腕、そして額の角…


「…鬼…?」

 誰かが呟いた…一瞬の静寂の後、皆一斉に逃げ惑った。

「ヒィ」

「ば…化物!?」

「たす…たすけ…」

「邪魔だ!!」

 皆我先にと逃げる。他人を踏み潰そうがお構い無し、他人を鬼の方に押しやり、囮にしたり。



「刀夜、夏希ちゃん…2人はお父さんと一緒に早く逃げなさい。」

「おかあさん?」

「私は私達にしか出来ない事をしなくちゃ」

「でも!」

「大丈夫よ。お母さんはヒーローなんだから。あんな奴には負けないわ。それに直ぐに応援が来るから…」

 母はそう言って鬼に向き直る。


「◼️◼️!!◼️◼️!!」

 母さんが何か叫ぶ。すると母さんの手に2振りの刀が握られていた。蒼白く氷の様な刀と燃える様な紅い刀

 そして母さんは鬼に向かって行った。

「おかぁさぁぁん!!」

 おれは父に連れられ、安全な所まで避難した。そして…

「刀夜、暫くしたら四季が来る。それまでここで待って居なさい。」

「おとうさんは?」

「父さんは母さんの所に行くよ。母さんを助けないと。」

 そう言って父は母の下に向かった。


 そして…応援が来た時には全て終わっていた。

「刀夜くん!?」

 夏希のおじさんや大人の静止を振り切り、あの場所に向かう。そして

「おかあさん?…おとうさん…?あぁぁああぁぁ!!?」

 全てが終わり、瓦礫の中にあったのは…下半身の無い父だったものと腹に穴の空いた母だったもの…そして首と腕を失くした鬼だったものだった。



「…と…や……じ…?」

「!?」

「おかあさん!?」

 かろうじてまだ息のあった母。母は能力者だった為、普通より頑丈だった。そのせいで直ぐには死ねなかったのだ。


 僕は母にすがりつく

「ぶ…じ…よか…た…」

「おかぁ…さん?」

「ごめ……ね…あい…て………わ……」

「おかあさん?おかあさん!?」

 そして母は息絶えた。









「っ!?はぁ…はぁ…」

 またあの日の夢を見る。今でも鮮明に思い出せる恐怖、絶望…


「っぅ…かあさん…とうさん……」

 両親を失った事、両親の姿……何より命を掛けて守った筈の者達の心無い言葉


何で早く助けなかった。

役立たず。

化物…


 母さん達は守る為に戦ったのに…何で?俺は悔しくて、悲しくて…そして憎悪した。母さん達を殺した化物も…母さん達を口汚く罵った人間を…俺は絶対に許さない。

 だから、俺は…

「人々を守る守護者になんか成りたく無い…俺は、夏希達さえ守れればいい」



『『……』』


 二度寝する気分でもない。俺は刀を持ち外に出てあてもなく適当に歩く。


 そして街を見渡せる丘の展望台に行き着く。そこには…


「こんばんは」

「……」

 2人の女性が居た。

 1人は青と白の着物を纏った青銀色の髪の女性で、もう1人は燃える様な赤い髪に口元を覆うマフラーの様な物をした赤と黒の着物の少女。

 余りにも場違いで……そして

 


「貴女、達は…っ!?」

 そこで気が付く。こいつらは気配。

 まるであの日の黒い鬼の様な…息苦しく、ゾワリと背筋を凍らせる様な圧倒的存在感


 俺は2体から距離をとり、刀に手を置く。牽制程度…いや、刀は抜けないからただの形だけの虚勢だ。しかし


「「……」」

「……?」

 刀を掴もうとした手が空振る。


「っ!?」

 視線を向けると、刀が無くなっていて鞘だけになっていた。

 どういう事だ?抜こうとしても抜けなかった刀が…部屋を出るまでは確かに鞘に納まっていた筈だ


「そう警戒しないで下さい。私達は貴方の敵では無いわ」

「…お前達は何者だ?」

 なんとか声を絞りだす。彼女達の存在感に呑まれそうになるが、本能が恐怖を感じないのか俺は少し落ち着いていた


「私は◼️◼️」

「…◼️◼️」

「いま、なんて?」

 ノイズの様に…聞き取れない


「やはり…ダメ…」

「力も、素質も問題無い。なら」

「…覚悟」

 2人が何やら話す


「おい!2人で納得するな。何なんだよ」


「私達は◼️◼️の◼️」

「◼️◼️との…約束」

「「私達は貴方の◼️」」

 何を言って…

「どういう意味…」

 その瞬間花吹雪が舞い、とっさに目を閉じる。再び目を開けると2人の姿は消えていた。


「何だったんだ?」

 解った事は2人が人間ではないという事と、こちらに敵意が無かった事だけだ。


「戻ろう」

 暫く呆然としていたが空が明るくなって来た為急いで寮に戻る。




 そして

「あれ?刀が…」

 確かな重さを感じ刀を見れば先程無くなっていた刀がまた鞘に納まっていた。

 

 不思議と恐怖等は感じなかった。ただ…何処か懐かしい気配を感じた気がした。

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双華の鬼 八幡 @yahata-80

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