第4話 幼馴染

 一通り学園や授業の説明を終え、今日はもう解散になる。

 既に何人かのグループが出来上がっていた。俺は…

「あ、刀夜。一緒に帰ろ?」

 教室の入り口から俺を呼ぶ声がした。1年の赤色のリボンに胸元にはクラスを示すBのバッチ。夏希だ


「ああ、今行く」

 俺は周りの視線を気にせず夏希の下に向かう。


「友達出来た?」

「…話す程度の人なら」

「そっか」

 夏希はそう言って笑った。


「…刀夜はこれからどうするの?」

「どうもしないさ。普通に授業を受ける。精々サポーターに成れる様には」

 俺は自分に戦える力が無いのは知っている。だからと言って夏希を放って置くことは出来ない。ならば、せめて彼女をサポート出来る様にしたい。


「…そう」

「俺は夏希に危険な事をして欲しくないんだ。夏希の身に何かあったら…俺は」

「刀夜…」

 夏希には力がある、そして才能も。彼女の隣に立ち、戦う事は俺には出来ない。


「…」

 夏希はそっと俺の手を握る

「私も…本当は戦いたくない。おじさんやおばさん見たいに死んじゃうかもしれない…」

 俺達は本当のを知っている。


「怖い。でも、お母さんや秋人、冬花を守る為なら…私は戦う。だって私にはその力が有るから」

「夏希」

「勿論…刀夜も、だよ?刀夜が居るから…私の帰る場所が有るから…私は頑張れる。」

「……」

 本当に強いよ。夏希は

それに比べ、俺は力も無ければ、覚悟も無い。本当情けなくて涙がでるよ。

 


 なぁ…俺はどうすればいいんだ?母さん…父さん。

 

 ーそして母さんの形見の異変に俺はまだ気が付いていなかった。





 俺達は自分達に宛がわれた寮に着く。寮…というより、ホテルか高級マンションだな。これは


 寮はツインタワーの様な見た目で左右で男女に分れている。


「それじゃ刀夜、また後でね」

「ああ」

 夏希と別れ、俺も部屋に向かう。荷物は既に届けられているだろう。寮は贅沢な事に1人部屋が与えられる。まぁ寮が他にも数ヶ所有るから人数的に余裕があるからだろう。

 夕食まで暫く時間があるから荷物の整理をしておくか。


 俺は札を取り出し、魔力を流す。すると、札は人型の影に変わり、動きだし荷物を出し始めた。これが俺の力。意志の無い式神を操る力だ。それも簡単で単純な命令1つしかこなせない程度の。

 それでもこういう時は助かる。


 片付けは式神に任せ。俺は日課のトレーニングをする。そして不意に母さんの形見が目に入る。

 

 母さんの実家…藤嶺家に伝わる霊刀。そう云われていた。実際は頑丈で切れ味の良い刀だろうけど。俺は布を外し、ケースから刀を出す。2振りの刀

 魔力を流し、引き抜く


「やはり…駄目か」

 しかし、刀は鞘から抜けなかった。昔母さんは『この子達はある程度力が無いと扱えないの…』

 と言っていた。そして名があるらしいが母さんが刀の名前を呼ぶ時、ノイズの様になり上手く聞き取れなかった。



「もうこんな時間か」

 俺は刀を置き、汗を流してから食堂に向かった。




 食堂の入り口で誰かが揉めている様だ


「だから、私は人を待っているんです!」

「でも、もう30分も待ってるだろ?」

「そうそう。相手も忘れてるって」

「俺達と食べようよ。」


「それは私が約束の時間より早く来てたからです」

 どうやら女子生徒が待ち合わせ中に男に絡まれている様だ。俺はそこに声をかける


「夏希。悪いな、待たせたか?」

「あ、刀夜!」

 俺に気付き、駆け寄ってきて、そのまま俺と腕を組む。


「それじゃ、待ち人が来たので」

 男達にそう言って俺達は横を通り抜け、食堂に入る


「あ、おい!!」

 男の1人が夏希に掴みかかろうとし

「っ!?」

「……」

 俺はそいつを睨む。


「ほら、刀夜。早く行こ?お腹空てるでしょ?私も早く食べたいよ」

「ああ」

 俺は男達から視線を外し進む。人間相手なら…こうも簡単にいくのにな。





「ほら、好き嫌いしないでちゃんと食べなさい」

 夏希が俺の皿にどんどん料理を盛っていく。


「自分で入れるよ」

 そう言うが

「駄目。刀夜は自分の好きな物しか取らないでしょ?ちゃんとバランス良くたべなきゃ」

 母親かよ…まぁ、忙しい暦さん(夏希の母)に代わり、弟と妹(ついでに刀夜)の面倒を見ていたからな。


「それに…トレーニングしたんでしょ?しっかり食べないと」

「…何で分かった?」

「ん?石鹸の匂いがしたから。汗を流したのかな?って。あの時間で汗をかくならトレーニングだと思ったの」

 本当に良く気が付くな


 そして俺達は食事をした。

 


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