第13話 己陶酔、幻摘弗
老人は鳥羽子に言った
「儂の家の前で何をしているのか俗者が」と。
鳥羽子は老人に尋ねた。
「貴方はかの楼鼎の賢者ですか。そうならばお話したい」と。
老人は酒を飲み、そして言った。
「いかにも。世間から賢者と呼ばれているが、名は哀韓(あいかん)。ただの老いぼれで世間から逃げた臆病者だよ。」と。
鳥羽子は自虐的な老人を見るやいなやその力量を゙見抜いていた。
この老人は賢者ではないと。それを見切った私は都のものよりも優れておると自尊心を持った。
鳥羽子は老人の目を見て云った。
「貴方は賢者ではありません。ただの放浪人である。」と。
その時茂みの中からある者が鳥羽子に言った。
「お主自身の見切りに陶酔しているな。老人が賢者で有ることに見破れて自身の力量の見切りは素晴らしいものだと考えているが私の幻を見破れていないではないか。」と。
鳥羽子は確かに目の前の老人が幻であることは全くわからなかった。そしてある者の言う通り自身の力量の見切りを高いものだと思っていた。
それに気づかせてくれた老人は間違えなく賢者である。
鳥羽子はある者の声がする方へお辞儀をした。
「参りました。」と。
雷鳥記 皇 遊李 @gfv14579
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。雷鳥記の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます