或る星の唄

えぬ爺

少女はひとり うたをうたっていました。

少女はひとり だれかとはなしていました。


「ねぇ、この広い場所のもっと遠くに」


少女は言いました。


「もっともっと遠いところに行ったら何があるかな」



ぼくは知っているよ。そんなこと。

でも、そんなことは言わないよ。 いえないよ。


「この空のずっとずっと上には何があるかな」


きっと、ぼくたちの知らないせかいだよ。



「そうだ、



私がこのせかいの全部を見せてあげる」



「一緒に行こう」


いっしょにいこう。ぼくたちはずっといっしょだから。



2人でいっしょに、広い世界を歩いた。

歩き続けた。




枯れた草原を歩きながら見上げる宙に


藍に流れる彗星も


廻り舞う星座達も


全部僕たちのものだった。



だれもいないせかい。


君がいるから大丈夫。



音もないせかい。


歩くビート。君のうたごえ。



何もないせかい。


何もなかった。けど、感情はあった。



そんなせかいは、思っていたよりずっと美しかった。


無機物なぼくでも このせかいは美しいと思った。





おはよう。せかいは思ったよりひろかったよ。

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或る星の唄 えぬ爺 @naganegi_

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