第3話 襲撃
夕日の綺麗な空中
カレイラをなんとか抱き寄せながら地面を背にするようにくるりと反転し
空を見ながら落ちる・・・
落ちる・・
落ちる・
「何やってんだろ俺」
目の前には綺麗な空と聳え立つビルという
入居を募集する広告写真のような景色が広がっていた
〜〜〜2時間前〜〜〜
「なあ、カレイラ、商業地区ってどんなとこ?」
ホバートラックを運転しながらカレイラに聞く
「うーん、とにかくいろんな人がいて、会社のある工業地区と比べるとかなり賑やかな場所かなぁ・・
軍事国家マーサリーみたいに殺伐とはしてないし、スラスみたいにハイテクじゃないけど、いろんな価値観、文化があるのがこの自由都市ラトルのいいところで、その中心部って感じかな、
あ、これからいくビルがこの辺りじゃ一番高いビルで、眺めは最高よ!」
いつも通りの明るい返事が返ってくる
「へぇー、まあでも眺めがよくたって、登る手段が階段じゃなぁ。。」
憂鬱な俺の呟きに
「いやいや、この業界にいてホバー付きの靴持ってない方がおかしいよ!」
とすかさずツッコミを入れるカレイラ
そう、クビになり続け、あまりお金のない俺が履いているのは
地球の時から履いている、なんの変哲もないただの靴
流石に地球の服装は目立つので、なけなしの金とピヨルドに借りた金をかけて揃えたが、
靴まで買う金は残ってなかった、、、
この星でハイテクなモノと言ったらモルサール社という企業が全てのシェアを総なめしているらしい
ピヨルドはそこの社員なので、一度おすすめされたが、流石に値が張る
そのため、
「大それた機能のついた靴なんてなくとも、根性でいける!!」
最初の頃はそんなふうに思っていたから、最低限こちらの乗り物を運転するためのライセンス取得に全力を注いだ
が、エレベータのない高層ビルの多いこと多いこと、、、
今では大きく後悔している、、
給料日まであと10日、、
そんな中で社長のあの依頼、、
確実に、社長の大事にしていたコップ
可愛い猫のようなキャラクターが描かれているお気に入りのコップを
力加減ができずに俺が粉々に粉砕してしまったのを
根に持たれてるに違いない
「そりゃないぜ社長・・」
「ん、なんか言った?」
配達の確認をしていたカレイラが聞き返す
「いや、なんでもない・・」
そんなこんなで商業地区に着いた
たくさんの人間でごった返している
こちらの流行りのファッションはわからないが
地球の感性からは、かけ離れている気がする
慣れることは果たしてあるのか
目的地である150階建ての高層ビルに到着したので、駐車場にトラックを停める
「しゃあああああ!やるぞおおおおお!!!」
屈伸運動をしながら、気合を入れて叫ぶが憂鬱な気分は晴れない
配達先は最上階である
情けないがホバー機能付きの靴を履いているカレイラに大きい荷物を預け
小さい方の荷物を2、3持つ
「もう、うるさいよ?さ、行こ!」
すーっと階段を登っていくカレイラに負けじと走りだす俺
〜1時間半後〜
根性でなんとかなると思っていたあの頃の自分に言ってやりたい
これはダメなやつだ
俺に足は付いているだろうか
疲れすぎて感覚がない
「ここはまかせて、先に行け」
座り込んだ姿勢でカレイラに呟く
「ふざけてないで行くよ!」
無理やり首根っこ掴まれて立たされる
厳しいカレイラである、、
「そんなぁ・・」
そうこうして目的地である、アリソンさんの部屋の前に着く
なぜかいつもうちに依頼してくれるお得意様だ
60代のパスフィール族のマダムである
パスフィール族はあのピヨルドと同じ種族だ
そう、タコみたいな足が3本ある
カレイラが呼び鈴を鳴らす
「(はい)」
「いつもご利用ありがとうございまーす!デイス運輸です!」
「(あーどうもー、ご苦労さま、今開けるわね)」
カレイラが元気に挨拶をすると鍵が自動で開く、
いつものことなのか、勝手にドアを開けて荷物を運び入れるカレイラ
そこに現れるアリソンさん
「カレイラちゃん、いいお茶が入ったからよかったらお茶菓子と一緒にどう?休憩していって」
白髪に小さなメガネをかけてふくよかな体型をした
アリソンさんからお誘いをいただく
優しさの女神か
「ぜひ!アリソンさんの作るお茶菓子大好きなんです!」
さすがカレイラ、かなり親しげだ
「そちらの新しい方?もどうぞ、上がっていって」
優しい笑顔で俺に言う
「ありがとうございます、最近入りましたリッキーと申します、お邪魔させていただきます」
そう言ってお辞儀をする
学生時代から会社員時代まで変わらない、人生の先輩に対する無難な受け答え
少し悲しくなるが、自分なりの処世術だ
「硬いよリッキー」
カレイラに呆れられるが、気にしないこれが俺だ・・
部屋の中に入ると、全てが綺麗に片付いており、編みかけのセーターのようなものだけが
ソファに置かれている
最上階なだけあって、窓の外の景色はやはり綺麗だ、もうすぐ夕陽が沈もうとしていて山々が輝いて見える
「さあどうぞ座って」
アリソンさんがお茶を用意してくれた机に向かい
椅子に座ろうとしたその時、編みかけのセーターの近くが
少し歪んだような、違和感を覚える
そう思った次の瞬間
レーザーのようなものが窓の方に向けて照射されたかと思うと、直後、雷のような電撃が発生、激しい衝撃波で窓が吹き飛ぶ
全てがスローモーションのように動き、カレイラもアリソンさんも
吹き飛んでいく
違和感を感じた方に目を向けると確実に何かがいた
そう思いながらも爆風には勝てず、壁に体を強く打ち付けられる
埃が落ち着き視界がクリアになってくる
耳鳴りがする
窓ガラスが床に飛び散っている
漏電したように焦げた壁紙
カーテンやソファには火が付いている
相手と対峙するには心許ないが、近くに飛んできた鉄製のフライ返しを
両手に持ち、頭から血を流し、気を失って倒れているカレイラを庇うように
俺は見えない何かに対峙する
あの時、空間のわずかな歪みに気づいた時にはもう遅かった
お得意さんのアリソンさんは爆発の最中、窓の外に連れ去られたように見えた
「予定外の人数だな、、なんだこいつ、そんなフライ返しで何する気だ?
ん、そいつどこかで、、、まあいい、どんな関係かは知らんが、そいつが死んだらお前のせいだ」
姿は見えないが、楽しんでいるような声がそう告げた次の瞬間
カレイラがふわりと浮いたかと思うと、投げられたように窓に向かって飛んでいく
「やめっ・・・!!」
窓の外に放り出されるカレイラを追って、走る
俺は部屋の窓から飛び出し、空中に投げ出されたカレイラを追う
なんとか追いつき抱き止めたが、地面に背を向けカレイラと一緒に落ち続ける
そのうち街の喧騒が近づいてくる
「せめてカレイラだけでも助かってくれ!!」
そう言ってしっかりとカレイラを抱きしめる
「うわああああああああああ!!!」
地面が近づいてくる恐怖でたまらず叫び声を上げる
〜〜
「うわああああ!あ、、、ああ、、、へ?、あれ?、、」
ふかふかの何かを背中で感じ、起き上がって目を開けると、壁紙は白を基調とした、病院のような場所でベッドに寝ていた
「た、助かった、、のか?ここは、、どこだ?」
エイリアン・リッキー(休載) 桶蜂 @okehachi
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