☆―正義としての決着―



「実に見事だねぇ。腹が痛い。この痛いってぇのは久しぶり感じたよ。それに、アタシの爪が当たらなかったのも久しぶりだ。いやぁ、本当にいい女だ。殺しちまうのはやめだ。ああ、そうだ。ここは一つ勝負をしないかい?」

 パキポキと指を鳴らす様が非常にお似合いのボス猫ちゃん。私をとてもいい女だなんて褒めながら殺害予告を撤回してくれ、同時に喧嘩を売ってくれた。

 人生19年。正義を執行してきた私ですが、一度ボコった相手から喧嘩の再販をされたのは初めての出来事だ。


「アタシらは気に入った相手を迎え入れたいときには名を名乗りあって決闘をするしきたりがあるんだ。一旦上下関係を決めるためにね。でだ、アタシはアンタを気に入った。だからよ、森人と妖精はもう放っておいてやるからアタシと決闘をしてくれないかい?ああ、ついでに賭けもしようや。アタシが勝てばアンタはアタシのモノ。アンタが勝てば…。まぁ何でもくれてやるよ」

 だってさ。うーん…、とってもいい話じゃない!

 ①に、決闘の名乗りだけど…、なんてカッコいいしきたりなんだ!これこれ!これがしたかったのよ!上下関係なんて社会じゃ常識だし、現に昔シバいた番長さんやらチンピラさんたちも手下みたいなのがいた気がする!なので、その決闘OK!受けましょう!

 ②に、森人と妖精のくだり。リューカちゃんたちにもう手出しをしないんだって!なんだよ、意外と話が分るじゃない、この子たち。

 ③に、賭けについて。これは…まぁ、よろしくはないけど…、金銭を賭けてないので…良しとしよう!

 ということで、決闘にむけてワクワクとしていると、


「アネーサ殿!そのような決闘は受けなくてもいい!あなたを犠牲にして事の始末をつけさせるわけにはいかない!」

 ゼルンさんが、私の名乗りよりも先に私の名前を暴露した。しかも決闘反対の発言を添えて。ちょっ、決闘反対はいいけど、先に名前言わないでよ…。それ、決闘のモラル違反ですよ?

 そんなちょっと空気読めないゼルンさん、略してKYZのせいか、ボス猫ちゃんから禍々しいオーラが沸いてきだした。まぁ…その気持ち、ちょっとわかる。


「アンタのことは気に入っちゃあいるが。今は少し黙ってな。じゃないと殺しちまうぞ…っ!」

 ほら、やっぱり怒られた。謝ろう?ね?

 

「アネーサ殿は恩人だ!みすみすと売ってなるものか!」

 風紀委員長ゼルンさんはヒートアップしている!ダメだ!ゼルンさん真面目そうだし、この浪漫は伝わらない!

 なんて、呑気に思っていると、どうやらボス猫ちゃんは怒りがプッチンした様子で…


「ああそうかい、なら殺してやるよ…っ!」

 ポケーとしている私をすり抜けてゼルンさんに走っていった。あっ!まずい!あれかなりキレてる!!誰かー!止めてー!

とエルフさん一同に期待をするも、スイギンおじいさんしか行動していない。

 …おいおい。まぁ、ゼルンさんが融通利かずに余計なことを言ったとは思うけどさ、味方の、それも隊長さんがピンチなんだぞ?助けろよ。

 でもまぁ、恐ろしい相手だから仕方ないのかなぁ?…多分、勝手に名前暴露しちゃったのが原因だから、教えてあげたら怒りも収まるだろう。

 なので、ここで自己紹介をっと…。

 あっ!そういえば、アクセントをつけないといかんのよね。


「アネーサ・オー・チャマールだ」

 一度目を閉じて、キリッと開眼。そんでニヒルにカッコつけて名乗りをあげた。

するとゼルンさんのお腹ギリギリのところで手を止めてくれたボス猫ちゃん。やべぇ!あとちょっとで、穴あきゼルンさんになるところだった!

「名乗るのだろう?私の名だ」

 背中に垂れる冷や汗を感じながらも、動きを止めたボス猫ちゃんに決め顔を向けると、ボス猫ちゃんもニコッと笑って、ゼルンさんを許して戻ってきてくれた。ふぅ、危ねぇ!


「やっぱりいい女だなぁ、アネーサ・オー・チャマール。それに、とてもいい名だ…。ああ、そうだ、アタシの名乗りがまだだったね。アタシは ハイラ・プチック。さて、名乗りを貰えたってことは、決闘と賭けを受けてくれるってことでいいのかい?」

 ありがとう!よく笑われるんだよね、御茶丸って。それと、ハイラちゃんもいい名前だよ。ギャップかな?大柄の強そうな見た目にハイラちゃん…。可愛い。

 …っと、また自分の世界へ入りこんじゃった。決闘かい?うん、いいよ。

「ああ」


「そうか!そりゃ嬉しいねぇ!!アネーサ、手を抜くんじゃねぇぜ?お互い全力で勝負といこうじゃないか!!!」

 夢のような展開だ!すごく健全的な気がする!スポーツ漫画みたい!お互い怪我しないように頑張ろうね!

 …でも、そういえばハイラちゃんたちって、結構悪いことをしていたんだよね…。

 それはいけない事だし、ちゃんと叱らないといけないよね。

 ということで、ここは一つ、全力でシバきます!そう、正義の力でね!

「いいだろう。正義の力を見せてやる」


「ほう!正義ときたか!!面白い!!!ならば悪の力を見せてやるよ!!!法則技法“向上”!!!!」

 ハイラちゃん、訳のわからんことを言った途端に、急にムキムキになって着ていた服が弾けたうえに、所々はだけて非常にエロくなった。

 うひょー!む、胸がすんごいことになってる!

「さぁ、第二開戦だぜ!くらいな!!!!」

 これが噂のハニートラップか!?なんて思っていると、ハイラちゃんが丸太のような大きな足で強烈なキックをしてきた。

 いかんいかん、今は決闘の最中だ。気を引き締めないと。

「いい蹴りだ」

 素直な感想。だってアレ、くらったらかなり痛いだろうし。

 けど、私に蹴り上げは愚策!なぜなら、私は空中殺法が得意なのです!ということで、蹴り上げに手を添え、空へ飛びあがり、弧を描く私!(カッコつけて)


「やるねぇ!見事だ!!だったらこいつはどうだぁあ!!!」

 魅せプレイにキラキラと輝く目をしたハイラちゃん。お次は目一杯のパンチをしてきた。

 恐ろしく強そうなパンチ。だがしかーし、それも愚策!実は私、理科の授業をヒントに、空中でのカウンターもすでに習得しておるのです。

 その名も“空中殺法・御茶丸カウンター”!

 説明すると、攻撃を手で受ける←これ力点ね。受けた勢いで回転←これ体が支点。蹴る←これ作用点と、新卒ならではの合理的な必殺技なのだ!実際、合ってるか怪しいけどこういうこと。

 すごく良いパンチだけど、これ勝負なのよね!というわけで、御茶丸カウンターを発動して、勢いを保ってハイラちゃんの頭を蹴り飛ばした。


「っぐおぉ!!?!?」

 カウンターを受けたのは初めてなのかね?随分と気が緩んでいたようで、クリティカルヒットして、ふらっと膝をついたハイラちゃん。追撃のチャンス!…なんだけど、でもそれ、なーんかわざとらしい気がするんだよね。けどまぁ、一応殴っときますか。

 華麗にカッコよく着地して、速攻の瞬速・御茶丸パンチをぶち込む。

 と、この僅かコンマ秒の世界で、ハイラちゃんが瞬速・御茶丸パンチをスッと避けた。あれま。やっぱり罠だったよ。


「っもらったぁああ!!!!!!!!!」

 ほんでもって、物凄い踏込みの、物凄いアッパーがやってきた。

 これが直撃したらならば、正義たるこの私でもまずいだろう。

 けど、何かあるだろうなとは思ってはいたので、対策は考えついている。とりあえず、逸らしちゃいましょう。“防御シリーズ・御茶丸アボイド”、君の出番だ!

 ちなみに御茶丸アボイドは単純明快で、攻撃に手を添えてただ逸らすだけなのだ。

 んで、顔目掛けてやって来るアッパーの丁度いいところに、グッと手を添えて逸らす。


 パンチは物凄い勢いで、表現するなら走る新幹線を触ってる感じ。

 すげえ勢いなので、添える手が擦りむけてしまい、古傷から出血してしまった。

 でも、効果はあったみたいで、そのすっげぇアッパーはちょこっと私の頬を掠めた程度で終わった。


 ハイラちゃん、当たらなくてびっくりした様子。可愛いね!だけどごめんね!蹴ります!


「なんだと!?っがぁああ!?!!」

 お腹へ蹴りがヒット!ヨロっと後退したハイラちゃん。その隙は大チャンスだね!続けて追撃をもう一丁!


「っまだま…っぐおぉ?!!」

 今度の追撃はクリーンヒット!逆でんぐり返しで転がっていった。と思いきや、すぐに立ち上がってあっという間に間合いに戻ってきた。


「ちっ!!お返しだ!!!!」

 ジャブを数発放つハイラちゃん。牽制攻撃だろうか?全然腰が入ってない。ぬるいぬるい。そんなの避けちゃうよ!

 そんでもって、お返しのお返しを放つも、避けられてしまい、お返しのお返しのお返しをされる。も、避けちゃう。以下ループ。


 攻めあぐねた様子のハイラちゃん。そんな私とのいちゃつきに、オーディエンスは大盛り上がりのご様子で、チラッと見えるゼルンさんの少し間抜けた顔が何か可愛かった。


 どれくらい経っただろうか。頭の中でゴングが鳴って、何となく手を止めた私たちは、少し離れて向かい合う。

 所々腫れているハイラちゃんと古傷が開いて血まみれの私。辺りはメチャクチャ。血は飛び散ってるし、地面はデコボコ状態。もうまさに修羅場。

 けど、ハイラちゃんは笑顔という、何かミスマッチな不思議な空気になっていた。


「さすがアタシが見込んだ女だよ、アネーサ。アンタは強い。強すぎる。アタシの渾身が手のひらを擦りむいただけなんてな。本当に大したもんだ」

 褒めて褒めて!御茶丸アボイドすごいでしょ?あれ、習得するまで苦労したんだ!


「アタシはアンタが欲しい。アタシのモノにしたい。惚れちまったんだよ。その力、その技術、その美貌にさ。…だけど、こんな楽しい決闘をされたらもう我慢できねぇよ…」

 同性から惚れられちゃった私。うれぴーけど、男子からが良かったなぁ…。

 私、男子からモテたことは一度もないけど、何故か女子からは超モテモテなんだよ。

 自分で言うのもなんだけど、カッコいいという自負はある。漢前だし、正義だし、力はメチャあるし、技術も一流だしね。美貌は…どうだろうか…?

 っと、話を聞かなきゃ。えっと?我慢できないって?何かするのかな?とりあえず、構えとくか。


「だからさ、アタシの“とっておき”をくれてやる。死ぬんじゃねぇぜ?アネーサ」

「言葉は無粋。かかってこい、ハイラ」

 思うより先に言葉が出てしまった。

 “とっておき”ねぇ?今更出し惜しみなど本当に無粋。

 舐めてんじゃないよ。死なんて、正義を目指したその日にとうに覚悟している。


「ああ、本当に最高の女だよ…」

 良い笑顔のハイラちゃん。さぁて、何をしてくる?


「…いくぜ、法則技法“超向上”!!!!」

 また出たよ、法則技法とやら。一体何なのそれ?…って思ってたら目の前にハイラちゃんが出現。すごい!瞬間移動じゃん!あっ、しかも足踏まれた!

「ッ!?」

 びっくり!すごい踏込みに、私、動けません!

「とっておきだ!!!“踏襲一滅”!!!!」

 動けないところに、恐ろしい勢いのパンチが飛んできた。ていうか、その技名カッコいいな。ネーミングセンスいいね。

 う~ん、御茶丸パンチはちょっと安直かな?もうちょっと良いのに変えようかな?…って感心している場合じゃない。今はあのパンチを何とかしないと!

 迫るパンチに向けて咄嗟に御茶丸アボイドをしようとするも…。

 あっ、これやべぇ!間に合わねぇ!!!!判断が遅すぎたようで、御茶丸アボイドは間に合わず、顔面に当たってしまった。


「ぐぅッッ!!!!!!!!!!」

 感想だけど、メッチャ痛い!!!足踏まれてるせいか、ぶっ飛んで衝撃を流すこともできんし、もうダイレクトにくらってしまった。

 物凄い衝撃で、中学二年のときに頑丈さを鍛える修行をするために、高速道路を走る4tトラックに飛び込んだことを思い出した。

 あの時は全治二日の大怪我を負ったうえに、運転手さんと警察と学校とおじいちゃんにメチャクチャ怒られた。当たり前だよね。あれは私も反省しています。しかもそれ以来、輪にかけて男子からモテなくなったんだよね。ああ、憂鬱です。


 あ、そういえば、今決闘の最中だった。

 あれ?辺りの風景がスローに見える。ゼルンさんが何か言ってる。

 あれ?ハイラちゃんが遠ざかってる。いや、私が離れてるんだ。

 ああ、こりゃいかん。ダメだ。YOU!LOSS!と天から聞こえた気がする。

 あちゃ~、審判は絶対だからなぁ~。負けたかぁ~。

 ごめんなさい、ミカさん。初日に負けちゃいました…。

 ごめんなさい、彼女さん。せっかく期待してくれたのに…。

 ごめんなさい、星さん。助けるって約束したのに…。

 ごめんなさい、皆。私は死んだ。スイーツ(笑)。

 ………

 ………

 ………

 ………いやいや、何言ってんの?私が敗北だって?天の野郎、何勝手に勝敗を決めてるんだ?

 正義は負けない。これ常識ね。

 だって正義には奥の手があるもの。テレビの彼も持っているし、漫画のヒーローも持っている。もちろん私だって持っている。

 私の奥の手の一つ、その名も“奥義・御茶丸バースト”だ。

 これを使うと、プラシーボ効果とかいうものにより、五分間だけ強くなれるのだ。

 よって、今の現状を打破するのは問題ないだろう。

 ただ、御茶丸バーストには副作用がある。

 それはテンションがかなり上がってしまい、今まで築き上げたキャラが壊れる恐れがあることと、血行が良くなって出血がひどくなること。

 …でもまぁ、仕方ないよね。私は負けるわけにはいかないんだ。

 ハイラちゃん、お覚悟を。

 これより、正義始動。御茶丸バースト、発動—―


 その瞬間に、全身に何かが走った。

 それは体中を駆け巡り、初めにドクンと心臓が応えた。血流が肉体を引き締め、脆弱な心は鼻血と共に出ていき、体に闘志が宿る。朽ちる足に正義が漲る。

 使命を全うせよ。天を仰ぐのはまだ先だ。だから、


「—―次はこちらの番だ」

 踏ん張って背を起こせ。だって、

「私は負けない!正義に敗北はあり得ない!!」

 両の手を正義に燃やせ。覚悟しろ、

「いくぞ!!“連撃・御茶丸パンチ”!!!」

 ハイラ、君の悪を成敗する!!!

「うぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」

 ガードされ、連打全てが弾かれてしまう。

 けど構うもんか。だったら、当たるまで殴ればいい。


 まだ遅い、まだ遅い、まだ遅い、まだ遅い、まだ遅い。

 もっと早く。もっと速く。

 音を超えろ。光を置き去りにしろ。

 ハイラのガードが緩んできた。

 良いぞ。パターンを変えろ。速く。速く。速く。


 混ぜたゲンコツとアッパーがハイラの守りを崩した!今だ!!!

 崩れたハイラは無防備だ。

 その一瞬、向かうその瞳に悪を見た。悪よ、悪よ、悪よ!!!

「悪よ、覚悟しろ!!!」

 打ち上げやれ。逃げ場を無くせ。

「っぐおぉ!!??」

 腹にめり込み、宙に浮かせた。足りない。これじゃ足りない!!

「ぐぐぐぐぐっぅ!!!!!」

 顔、胸、腹、全てを殴れ。悪は完膚なきまでぶん殴ってやる!!

 悪の心にヒビが見える。

 亀裂は大きくなった。

 あと一発、特大の一発で砕け散る。ならば、

「最後だ!!!“真・御茶丸パンチ”!!!!」

 腰を落として踏み込め。正義の右手を解き放つ。


 ハイラの胸へ、その悪の心へ、正義の鉄槌を、

 ぶち当てろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「っうぐぅあ!!!!!!!!」


 ハイラは吹き飛び、村の門へ当たって、大きな衝撃音が鳴り響いた。

 確かな手応えを感じた。悪の心、その砕け散る音が聞こえた。


「まだ…まだ……やれ……る…ぜ………」

 遠くから聞こえる小さな声。それはきっと、私にしか聞こえていないだろう。

 けど、ダメだ。君はもう立ち上がれない。戦いを知る者ならわかる。


 予想通りハイラは立ち上がれず、ドサッと前のめりに倒れた。

 獣人たちは動かないボスを呆然としており、そんな彼らを見据え、血を拭い、構えを解いた。フィナーレ。正義の勝ちだ。

「…勝負は私の勝ちだ」

 言葉を聞き、勝負の行く末、ボスであるハイラを心配そうに見た彼らは、手に持つ凶器を放り投げて、両手をあげた。

 とその瞬間に森人の大きな歓声が鳴り響き、その音で御茶丸バーストが解けた。


 エルフさんたちの熱狂とは逆に、スーッと冷静になってきた私。

 …うぅぅ、やりすぎた気がする。なんでいつも乱暴な思考になるんだ…。

 しかも、何で技名叫んでるんだよぅ…。

 ハイラちゃんの技名聞いたあとだと、すげぇダサく感じたし…。

 それに…、何?あの一人語り…?

 ああああ!!!御茶丸バーストすると、中二病全開になること忘れてたよ!

 恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい!


 隠された副作用、中二病発症のあまりの痛さ、その羞恥に悶えていると、

「お見事でしたアネーサ殿!体は大丈夫でしょうか?お疲れだと思いますので、あとは私たちにお任せください…!」

 と、ニッコニコのゼルンさんの声で意識を戻し、崩れかけたキャラを再建する。

 それでふと辺りを見渡すと、すでに防衛隊の皆さんが猫太郎を拘束していた。

 何と仕事が早いんだ。うーん、疲れたし、猫太郎たちの連行はお願いしようかな。

 けど…、だけど、ハイラちゃんだけは私が連れて行こう。


「ああ、頼む。だが彼女だけは私が介抱しよう」

 ゼルンさんに猫太郎たちをお願いしたあと、私は爆ぜた門の下に突っ伏して倒れているハイラちゃんのもとへ向かい、彼女をゆっくりと持ち上げた。


「ハイラ、君は強かった。君が悪事をやめ、更生してくれたなら、私たちはきっと良き友になれる」

 自然と出た言葉。純粋な言葉だ。

 私とガチンコで決闘して、対人で御茶丸バーストを使わせたのはハイラちゃんが初めてだし、しかも戦いにおいて諦めかけたのもハイラちゃんが初めてだ。

 つまりハイラちゃんは本当に強かった。絶対に友達になろうね!ズットモだよ!

 …まぁ、悪事をやめる気がなかったらもう一回シバくけど。


 ということで、ハイラちゃん一同を警備所へ連行して、本日の危機は終了だろうね。いやぁ、めでたしめでたし。

 そうそう、ハイラちゃん&猫太郎たちよ。可哀そうだけど、君たち悪は反省を込めて、牢屋で一泊です。


 そして、勝者かつ、正義たるこの私は…、エルフさんと妖精さんとでパーティじゃ!!

 名目は正義の勝利を祝してということにして、異世界の宴、それも粒ぞろいの可愛い子ちゃんを侍らせて楽しみましょうか!!!

 という野望を胸に、ハイラちゃんを担いで警備所に向かった。






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異世界新正義伝説 アネーサ 藤﨑 涼 @ishikabo

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