第6話(最終話)AI絵師が無双した結果がこちら

 俺は「究極にして至高の絵」を作ろうとし、失敗した。

 俺の画像生成AIはもう使い物にならないし、絵を仕事にすることもできなくなった。


「こんなはずじゃなかったのに!」


 俺は頭を抱えてしまった。

 SNSにも毎日怒涛のように絵を投稿していた俺が投稿を中断してから、AI絵師仲間が心配したのか声をかけてくれた。

 俺の今の状況を話すと、「それは大変だね、ご愁傷さま」と返ってきた。

 AI絵師はなんとなく仲間意識でつるんでいるだけで、案外ドライだなと思った。

 その仲間意識は「自分たちは画像生成AI反対派に目の敵にされていて、仲間同士で寄り添わないと敵に攻撃されるから」という、草食動物が群れをなすようなものであった。


 俺が絵を描けなくなったと知ると、今まで俺のファンだと思っていた人たちも手のひらを返した。

「AIに頼って絵を描いてたやつが描けなくなったならもう価値はないな」と言いたげに、フォロワーの数はみるみる減っていった。人間とは薄情なものである。


 俺はSNSのアカウントを消し、絵の仕事用のサイトも退会した。

 しばらく魂が抜けたようにぼうっとしていた。

 今からまた神絵を何百枚も集めて、AIに教え直すのは骨だ。虚無感が勝って、もうAIをいじる気になれない。


 俺はふと、紙に鉛筆で絵を描いてみた。

 俺のもともとの絵柄はやっぱり「よくわからない何か」で、練習していないのもあり、全く画力は上がっていなかった。


〈了〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヘタレ絵描きの俺は画像生成AIの力で神絵師相手に無双する 永久保セツナ @0922

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ