episode7
「昇ちゃんは、メイクありとノーメイク、どっちが好き?」
「……それ、此処で聞くのか?」
付き合うことになったと、男とその奥さんに報告するため、おれは二年ぶり(リコは頻繁に来ていたそうだが)に、男のバーを訪れた。二人とも、本当に楽しそうに、おれたちの話を聞いてくれた。
キラキラと煌めくリコの瞳に焦げそうで、おれは目を逸らす。
「……どっちも、好きだよ。」
「そう言ってくれると思ってた。」
リコは、そう言って嬉しそうに笑った。
「レディ、隣の彼は?」
バーのカウンターでグラスを揺らしていた紳士が、リコに尋ねた。メイクによって彩られた彼女の唇が、嬉しそうに歪められる。
「……私の、彼氏♡」
素直な彼女の顔が、とてつもなく愛おしいと思えたとき、おれは自然と笑っていた。
紳士が微笑みと共に店を出た後、リコはアプリコットフィズを頼んだ。
「昇ちゃん、こっち向いて?」
リコが、アプリコットフィズのグラス越しに、おれを見る。
「……琥珀色の奥、貴方の笑顔は私だけのものだから。」
愛おしいと思える彼女は、そう言って笑った。
アプリコットフィズの、グラス越しの瞳を私に。 水浦果林 @03karin
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