第6話 7日目 対馬へ 

トラベル小説


 韓国最後の食事はあわび粥にすることにした。昨日、あまりにも辛い料理を食べたので、辛くない料理を食べることにした。このあわび粥、ソウルで食べたことがあるが、あわびが細かく切られ、食感はただのお粥と変わらなかったからだ。

 でも、釜山で入った店のあわび粥は絶品だった。あわびが3切れもはいっていたのである。それもかみごたえがある。それで値段は1000円。他のお粥と比べれば高いが、ソウルのあわび粥より安い。二人でニンマリしていた。

 9時のフェリーで対馬に渡ることにした。ジェットフォイルという高速船なので、1時間ちょっとで対馬に到着した。韓国出国も日本入国もあっさりしたものだ。スーツケースを荷物預け所に預け、タクシーで30分ほど乗り金田城(かねだじょう・かなたのき)に向かう。タクシー代がやたら高く感じる。そこからハイキングだ。

 1300年前に造られた古代山城である。天智天皇の時代で日本が朝鮮の白村江の戦いで敗れたために、朝廷が作った防御の城である。それも土塁ではなく、石壁の城である。戦国時代の石垣とは違う薄い石を重ねたものである。それがずっと続いている。日本の城の原点はここにあるのかもしれない。そういえば、岡山県の鬼ケ城もこういう造りだった。

 歩いていると砲台跡があった。日露戦争の際に造られたと説明板に書いてある。ロシア艦隊をここからねらっていたのだ。

 40分ほどで頂上についた。見晴らしはいい。標高は250mほどだが、韓国もよく見える。いつまでも平和であってほしいと思う場所であった。

 夕方のジェットフォイルで博多に渡った。2時間もかかった。木村くんは飛行機をやめて最終の新幹線で帰ることにした。

「キムチが破裂すると困るので、新幹線で帰ります。ところで、今回の旅で韓国の城めぐりは終わりですか?」

「いや、南漢山城や晋州城・扶余城も見応えがあるらしいよ。ソウル城郭も少ししか歩いていないし、それと江華島(カンファド)にも行ってみたいと思っている」

「それじゃ、また行きましょう。木村さんとの旅はおもしろいです」

「オレもだよ。退屈しなくていいから・・」

「えー退屈しのぎですかー! まあいいや。それじゃまた会いましょう」

と言って、木村くんは去っていった。後日きた手紙には「キムチ、期待したほどおいしくなかったです」と書いてあった。韓国人が好むキムチは酸っぱいので、日本人好みではないということを木村くんもわかったようだ。


 その日は博多駅前のビジネスホテルに泊まった。何度か泊まったことがあるホテルで、近くにあるハンバーグ屋さんがお気に入りの店だ。荷物を置いてから、その店に行った。相変わらず行列ができている。30分ほどで入店。この店は韓流スターがSNSで紹介したらしく、以前は韓国人観光客でいっぱいだった。今は落ち着いて、日本人・韓国人がほぼ同数だ。Mサイズのハンバーグを注文する。ここのハンバーグは軽く焼いた状態で出てくる。そこから熱い石みたいな鉄板の上でセルフで焼きを入れるシステムだ。お店のスタッフは「しっかり焼いてくださいね」と言うが、私は生に近い状態で食べるのが好きだ。ほどよい甘さを感じる。食後のアイスもうれしい。これが韓国人に受けているのかもしれない。

 翌日、私は飛行機でもどった。そこでひとつの疑問がわきおこった。私は空港の駐車場にクルマを置いていたので、飛行機で帰らざるをえなかったが、木村くんはどうだったのだろうか。電車で中部セントレア空港まで来ていたと思うが、クルマで来ていたら大変だったろうな。と余計なことを考えていた。いっしょに2回の旅をして、なんか他人に思えなくなっていた。


あとがき


 2006年から2009年までソウル駐在の経験があり、今回はその時期にめぐった城をもとに書いてみました。西生浦倭城は、2度訪れました。1度目はバス停からタクシーで行ったら、どんどん山道の細い道を上り、畑のど真ん中で降ろされました。運転手は獣道みたいなところを指さしていました。変なところで降ろされたと思いましたが、歩いて5分で本丸跡につきました。後で調べたら、本丸後ろにある馬出し口でした。そして、40分かけて縦石垣の脇を下りました。本丸跡は日本の城跡と同じように思えましたが、下から見た西生浦城は異様な城でした。

 2度目は、タクシーを使わず、自分の足で登りました。まっすぐ登れるわけではなく、ところどころ桝形の石垣に囲まれており、まさに攻めにくい城だということがよくわかりました。

 文中にも書きましたが、続編を考えています。お楽しみに。なお、トラベル小説として、旅シリーズ「スイスを旅して」「韓国グルメ旅」そして、木村くんと出会った「ドイツを旅して」「南フランスを旅して」をアップしています。興味があったら読んでみてください。

 次回作は、「ベルギー城めぐり」です。城好きの方はどうぞ。

                   飛鳥 竜二

 

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 韓国城めぐり 飛鳥 竜二 @taryuji

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