第19話 協力者
思考が混乱する。
「落ち着いて。そういうのは、順序というものがあって、その、、、」
僕が、しどろもどろ答えると、あかねは笑いながら冗談よと、僕を落ち着かせた。
「冗談でそういう事を言うなよ!」
真っ赤な顔の僕にいつもの余裕のあるあかね。
「ちょっとしたイタズラ心だよ。」
そして、僕の元を去る前に一言だけ。
「私は、大丈夫だから。誠一は誠一の事を考えて。私も負けないから。」
ニコッと、微笑むとその場を去って行った。
しばらく、呆然としてしまったせいで、蒼太と約束していたカフェへには遅刻してしまって、お詫びにコーヒーを僕の奢りで一緒に飲んだ。
カフェは古民家カフェといった感じで、温もりを感じる穏やかな場所だった。
店主である旦那さんが僕達の話を聞くと、一緒にお店で働く奥さんが、書き込みした事が分かった。
奥さんの話によると、突然、東堂さんの使いから、池田家との関わりを持つ事を禁ずると言われたそうだ。
都会から田舎に越して来て、そういった田舎の風習とか分からないけど、何より権力にものをいわせて、弱い者を追い詰める行為が許せないと思い、僕達に協力したいとの事だった。
ちょうど、野菜をたくさん使ったサンドイッチやサラダを新メニューに考案中で、僕の両親の了解が取れれば、作物の取引をしたいと言ってくれた。
あと、店内の空いてるスペースに作物を売ってもいいと。
ありがたい話だけど、もし、東堂家がここに押しかけて来たらと躊躇ったが、実は、東堂家というより、東堂家の息子。
東堂圭介に不満を持つ住民が多いらしい。
一見、好青年に見えるが、学校や町で様々な悪さをしては、親の力でねじ伏せているとか。
祖父は、それを正す為に、本人の意向もあり東堂圭介をこの町に迎え入れたが、相変わらずの様。
「それじゃあ、東堂の祖父に会って、話し合えば、何とか出来るかもしれない。」
「無理だ。あかねちゃんは、いわゆるこの町を守る為の犠牲みたいなものだろ。ついでに誠一一家もな。」
ついでって、言うなよ。そう、僕が突っ込むと、蒼太は笑った。
「それで、この町が平穏に過ごせるなら仕方ないって判断だろ。」
すると、奥さんは意外な事を僕達に問いかけた。
「それじゃあ、君達、ここで働いてみない?」
「えっ?」
返事が蒼太と被る。
「あなた達の事を町の人達に知ってもらって、町おこしの協力を仰ぐのよ。ちょうどいいと思わない?」
「そうだな。学校帰りでも良いし、君達が良ければ、いつでも来てくれ。」
旦那さんと奥さんはニコッと微笑んだ。
「ほっ、本当に良いんですか⁉︎
僕、見た通り陰キャで、引っ込み思案で、接客なんて、初めてで、、、。」
「そこは、イケメンの俺がカバーするよ。」
蒼太が僕に肩を組んで笑った。
カフェ店の夫婦も笑った。
途端に恥ずかしくなった。
その日は、そこで、話は終わりにして、両親の了解を得たら、初めてのバイトデビューだ。
バイトというより、ボランティアだけど。
どんな状況でも周りを見渡せば、助けてくれる人がいる事が分かって安堵した。
オタクな君に恋してる! はる @haru0012
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