第18話 離れてても心は離れない
早速、僕と蒼太は下校から一緒に掲示板のスレに書き込みをくれたカフェに向かう事にした。
学校から少し距離はあるけど、夕飯前までには家に帰れるだろう。
蒼太は、生徒会があるらしく、生徒会長の東堂の情報集めも含めて、先に行ってくれって、言われたけど、コミュ障ゆえにいきなり一人で突入するのは勇気がいる。
そんな緊張感を感じていると、学校の塀の向こう側が何か騒がしい。
何か起こったのかなぁと、見上げた途端だった。
なんと、あかねが塀を乗り越えて、僕に覆い被さるように降って落ちて来た。
受け止める事が出来たらカッコいいだろうけど、そんな少女漫画的な展開は虚しく、案の定、不器用さゆえに下敷きになってしまった。
お互いに驚いた顔をして、思わず声を出そうとすると、あかねは僕の口を手で塞いで、自分の口元に人差し指を当てた。
静かにというように。
僕は、それを理解して、どこか隠れるところはないかと、あたりを見回した。
そうだ!この公園の先に森がある!
あかねの手を引くと、久しぶりに握ったあかねの手はとても冷たかった。
急いで公園を抜けて、森の奥に入り身を隠す事にした。
しばらくの沈黙の間、久しぶりにあかねに会えたのは嬉しいけど、なんと声を掛けていいか分からずにじっとしていると、手を繋いだままだった事を思い出して、慌てて手を離そうとした。
「ごっ、ごめん。手、、、繋いだままで。」
「いい。離さないで。」
以前と違って、か弱い少女のようなあかねが心配だ。
「誠一、ごめんね。私のせいで、面倒な事に巻き込んで。」
「あかねのせいじゃないよ。自分を責めないで。」
そう言うと、あかねは唇を噛み締めて、堪えていた涙をポロポロと流した。
相当、辛い思いをしているのだろう。
「必ず、助けに行くから。だから、、、」
僕は、それ以上は言葉を詰まらせた。
散々、待たせて置いて、さらに待っててくれって言えなかった。
あかねは、僕の手を強く握った。
すると、周辺からあかねを呼ぶ数人の男性の声が聞こえて来た。
その声にあかねは、ビクッと、肩を強張らせた。
そして、木の葉から見える夕陽を眺めながら呟いた。
「もし、このまま、二人で遠くに誰も私達の事を知らない所に行けたらいいのにね。」
そう、呟いた後、繋いでいた手を離し、制服の袖で涙を拭い立ち上がると、僕にありがとうと、一言だけ言って、声が聞こえた男性達の方へ向かって行く。
「待って!あかね!行かないで!」
僕は、あかねを止めようとしたけど、あかねは振り返らない。
「あかね!」
もし、今、あかねを止めれなかったら、もぅ、二度と会えない気がした。
それだけは、絶対に嫌だ‼︎
そう、思って追いかけた、、が、、、。
木の根に躓いてしまって、あかねを押し倒すように倒れてしまった。
「えっ、わっ!その!えっと⁉︎」
すぐに上体を起こして慌てふためく。
あかねは、驚きつつもふふっと笑みを浮かべると、そっと僕の頬にキスをした。
「私も誠一と離れたくない。お願い。私を誠一だけのものにして。」
心臓が高鳴る。
お互いの視線が合い、晒す事が出来ない。
つまり。そう言う事だよね。
いきなりハードル高くないか⁉︎
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