第117話 覚悟
放たれた強烈な炎魔法。
状況を把握していないカテリノ様があれを回避するのは不可能――そう感じた瞬間、俺は彼女の前に立って魔道具を構えていた。
それは指輪の形をした防御特化型魔道具。
そう――ここまで俺たちを導いてくれたあの指輪だ。
実はこいつには魔力を弾き返せるという効果もつけていたのだが、まだ試験段階にあるためこれまで使用をためらっていた。
しかし、今はそんなことを言っていられる状況じゃない。
カテリノ様を救うため、ぶっつけ本番になったがその魔道具へ魔力を注ぐ。
「うおぉ!」
ありったけの力でヘレナ様の魔法を受け止める。
だが、さすがに俺ひとりでは消滅させられるまではいかず、結果的に弾き飛ばされてしまった。それでも直撃するよりはずっとダメージは軽微。実際、カテリノ様はすぐに起き上がることができた。
「い、一体、何が起きていますの!?」
彼女からすれば、訳の分からない状況だろうな。
同じようにロミーナを敵視してきた姉のエクリア様が、なぜかそのロミーナの味方側に回って母親と対峙しているのだから。
「カテリノ! お母様は邪悪な魔力に魅入られて正常な判断力を失っているわ!」
「お、お母様が……?」
エクリア様が咄嗟にそう叫ぶも、追撃態勢に入っていたヘレナ様はすでに彼女の真後ろまで迫っていた。
「くそっ!?」
なんとか助けだそうとするも、吹っ飛ばされた時に背中を強く打ちつけたせいか体がうまく動かない。カルロもモリスさんも俺を心配して駆け寄ってきてくれたため、ヘレナ様の攻撃に対する反応が遅れてしまった。
まずい。
今度こそ直撃だ。
――そう思った直後、カテリノ様は間一髪のところで追加の炎魔法を回避した。
「なっ!?」
たまらず驚きの声が漏れる。
なんて反応速度だ。
確か、カテリノ様は魔法よりも体術の方が得意という話だったが……そのおかげだろうか。
「実の娘であるわたくしにあれほどの威力ある魔法をためらいなく放つなんて……どうやらエクリアお姉様の言うように正気を失われているようですわね」
母親から明確な殺意の込められた魔法を向けられたカテリノ様。
ショックだったろうが、すぐに気持ちを切り替えていた。
「わたくしたち姉妹でお母様を止めましょう」
「そうね。――ロミーナ」
「分かっています、お姉様。私も力になります」
「……ありがとう」
長らく埋まらなかった三姉妹の溝。
それが解消した今――この場における最大戦力となってヘレナ様へと挑む。
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