第116話 姉妹共闘

「これまであなたにしてきた仕打ちを考えれば、わたくしの言葉を信用できないのは当然ではありますけど……」

「いいえ、お姉様――やりましょう」


 共闘を提案したエクリア様だが、やはりその胸のうちにはこれまでのロミーナに対する悪態がチラついていた。

 しかし、今はそれを反省して母親からの脅威に打ち勝つべくともに戦う道を示している。


 ……確かにロミーナはエクリア様やカテリノ様からひどい仕打ちを受けてきたけど、それは母親であるヘレナ様の教育によって半ば洗脳されていたから。彼女の中にはもっと幼い頃、一緒に楽しく遊んでいた記憶がある。


 あの頃のような関係に戻れたら――ロミーナの中にはきっとそんな感情がくすぶっていたのだろう。

 そしてこれを機会に姉妹の関係性を修復しようとしている。


 これって……原作からの流れが大きく変わる要因になり得ないか?


 つまり、【氷結女帝】の異名で呼ばれたロミーナが主人公カルロに討伐される未来が潰える可能性が高い。ここまでの流れから、やはり彼女が悪の道へ走った最大の原因は身内にあると理解できたからな。


 ヘレナ様の件を綺麗に片づけることができれば、きっとロミーナに明るい未来が訪れる。

 そんな展開を熱望していた俺にとっては絶対に負けられない戦いだな。


 ――が、事態はそう簡単に収束しそうにない。


 何せ禁じられた魔道具の影響でヘレナ様は超一流の魔法使い並みに魔力が増えている。これから放たれる魔法の威力は正直想像がつかない。


 彼女を止める方法はただひとつ――魔道具の正体を暴き、それを破壊することだ。


「みんな! 俺はヘレナ様に魔力を与えている魔道具を探る! それまでなんとか時間を稼いでくれ!」

「分かったわ!」

「任せなさい!」

「僕もいきます!」

「我らも負けてはいられないな、パウリーネ」

「そうね、モリス」


 ロミーナ、エクリア様、そしてカルロ。

 さらにはモリスさんやパウリーネさん。


 こちらの総力を結集して挑む――と、その時、さらに声がひとつ増えた。

 

「お待たせしましたわね!」


 拳で壁を突き破り、乱入してきたのはカテリノ様だった。

 追跡の途中で見失ってしまったのをすっかり忘れていたが……彼女にもここまでの経緯を説明して協力をしてもらいたい。


 だが、そんな悠長な時間は与えられるはずもなく、こちらがまったく仕掛けてこないことに痺れを切らしたヘレナ様が魔法攻撃を仕掛けてくる。


 属性は炎。


 その範囲は計り知れない。


「カテリノ! 避けなさい!」

「へっ? エクリアお姉様? なんでそっち側に?」

「説明はあとよ! 今はお母様を止めるわ!」

「えっ? えっ?」


 案の定、事態がハッキリと理解できていないカテリノ様――だが、相手は待ってくれない。

 強烈な炎魔法が俺たちを襲う。

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