第115話 禁じられた力
突如として強大な魔力に包まれたヘレナ様。
瞳は爛々と赤く輝き、まるで獣のような唸り声まであげている。
明らかな異常事態の正体は――
「まさか……あの魔道具を使ったのか……」
使用者の魔力を上昇させる効果を持った魔道具。それ自体は決して珍しいものではなく、魔法使いの間では普通に流通している。
問題は使用量だ。
一般的に魔法使いたちが使う魔力上昇の魔道具は、戦闘などで激しく消耗した際の回復薬的な意味合いを持つ。
だが、今回のケースはまったく異なる。
ヘレナ様は自身の魔力を短時間のうちに大幅強化させることを目的に魔力上昇の魔道具を使用した。
それも、通常では考えられない量だ。
となれば、心身への負担もかなりのものとなり、仮に成功したとしても無事では済まないだろう。これくらいのケースはヘレナ様だって十分予測できていたはずだが、そのリスクを冒してでもこの場は退けないと判断したようだ。
しかし、ふたりの娘にとってはそんなの関係ない。
母親が雄叫びをあげ、苦しみながら少しずつ異形の姿へと変貌していく光景を眺めるロミーナとエクリア様。
「あぁ……」
「そんな……」
放心状態となり、ただ見上げることしかできない。
一方、ヘレナ様はそんなふたりを尻目にどんどん巨大化。ついには頭が部屋の天井につくまで大きくなってしまう。
「アズベル様! 一度部屋を出ましょう!」
「そ、そうだな! カルロ! 君はエクリア様を頼む!」
「は、はい!」
魂が抜けたようになってしまったロミーナとエクリア様を抱えつつ、俺たちは研究棟から脱出――したと思ったのだが、壁を突き破ってきたヘレナ様の大きな腕がそれを阻む。
「ぐっ!?」
逃げ道を塞がれた俺たちがとるべき行動は――ひとつ。
崩壊を始めた校舎を舞台に、ヘレナ様との最終決戦へ挑む。
「やるしかないのか……」
「――アズベル」
決断を迷っていると、抱きかかえていたロミーナが我に返っていた。
そして――
「お母様を止めましょう……」
「ロ、ロミーナ」
「あのままではいずれ騎士や魔法使いによって討伐されてしまう……その前に……」
「私たちの手でお母様を救い出しましょう」
そう語ったのはエクリア様だった。
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