第114話 形勢逆転――のはず?
長姉であるエクリア様はいても、次女のカテリノ様の姿が見えない。
さっき見かけたし、学園内のどこかにいるのは間違いないのだが……って、今はそれどころじゃない!
「アズベル様!」
「モリスさん!」
エクリア様の手によって石化魔法が解除され、元に戻ったモリスさんと合流。ここにロミーナ、パウリーネさん、そしてカルロを加え、さらにエクリア様が戦線離脱状態となっているため戦力はこちらが大きく上回る形となった。
――が、なぜだろう。
まったく勝てる気がしない。
たぶん、ヘレナ様の全身から漂う強者のオーラが有利さを打ち消しているんじゃないかな。
あと……まだ何か隠していそうだし。
「ヘレナ様、もうあきらめてください」
まともに戦えば潰し合いになると察した俺は説得を試みる。
「あなたの真意は分かりませんが、このまま続けてもいずれ必ず破綻します。今ならまだ引き返せる……考え直してください」
「あなたに何が分かるというの?」
吐き捨てるようにヘレナ様はそう告げ、なおも続ける。
「今の座で満足していてはダメなのよ。ペンバートン家をさらに大きくしていくには、他者を蹴落とす必要も出てくる」
……とんでもない野心だな。
ペンバートン家の当主であり、彼女にとっては夫となるカリング様とは正反対だ。
あの方は温和な性格で争いごとを好まず、娘たちを良く気にかけていた。俺の目にはヘレナ様の抱く野心とは無縁で、現状に満足している人物と映っていた。
きっと、それが木に食わなかったのだろうな。
しかし、だからといって今回のような凶行が許される理由にはならない。
というか、なんだって結界魔法を展開し、学園関係者を閉じ込めておくようなマネに出たんだ?
そんな疑問を抱いていると、ヘレナ様の厳しい視線がロミーナへ向けられているのに気づいた。やっぱり、狙いは彼女なのか?
「ヘレナ・ペンバートン、無駄な抵抗はやめて降参するんだ」
「先ほどアズベル様が言ったように、今ならまだ引き返せます」
モリスさんとパウリーネさんも説得を試みるが、ヘレナ様からの応答はない。
しばらく膠着状態が続いていたが、突然強力な魔力が発生し、俺たちは一斉に身構えた。
「へ、ヘレナ様……?」
魔力の出所はヘレナ様のようだが……一体何をしたんだ?
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