第113話 歪んだ親子の絆
思わぬ展開だ。
魔力が弱めだからと油断していたのは認めるけど……まさかヘレナ様が俺と同じ魔道具使いだったなんて。
エクリア様やカテリノ様、そしてロミーナと優秀な資質を持った娘たちの母親にしては随分と控えめとは思った。
しかし、それをカバーするために魔道具を――ほとんど俺と同じ発想だな。
ただ、だからといって退くわけにはいかない。
モリスさんが石化させられてしまっている以上、このまま引き下がれるか。
その原因の一端でもあるエクリア様は、助けられたことが不思議なようでこの状況下でもキョトンとした顔でこちらを見つめていた。
「あなた……どうして私を……」
「体が勝手に動いたんですよ。――それに、あなたはロミーナのお姉さんだ。あなたがいなくなれば、きっとロミーナは悲しむ」
「えっ?」
またしても理解できないといった顔つきとなるエクリア様。
まあ、彼女は妹であるロミーナに散々悪態をついてきたから、むしろ自分がいなくなることで妹は清々するんじゃないかって思っているのだろう。
けど、その認識は誤りだ。
ロミーナは今も家族で仲良く暮らせる日を夢見ている。
うちへ来てからもその気持ちは変わっていないはずだ。
現に――
「よかった……お姉様が無事で……」
エクリア様が助かったと知って心から安堵するロミーナ。その表情に嘘偽りなど微塵もないというのはエクリア様にも十分伝わっただろう。
「ロミーナ……あなた……」
これまで信じてきたモノが心の中で揺らいでいる。
きっと、エクリア様の今の気持ちはそんなところだろう。
――きっと、幼い頃から植えつけられてきたんだ。
母親であるヘレナ様に。
だが、それは着実に崩れつつある。
たった今、母親は自分に向かって攻撃をしてきた。
その事実が、エクリア様から冷静な判断力を奪う。
「エクリア様! ここは俺たちに任せて逃げてください!」
「で、でも」
「必ず何とかします!」
もう時間は残されていないと判断し、とりあえずエクリア様だけでも逃がそうとそう声をかけた――が、ここで彼女は意外な行動に出る。
なんと、モリスさんの石化魔法を解除したのだ。
「うおっ!?」
急に元の姿へと戻ったモリスさんはバランスを崩して倒れ込む。
いきなり魔法が解除されて驚いているようだが――それ以上に驚愕の表情を浮かべていたのはヘレナ様だった。
「エクリア……」
「お母様……」
「――そう。あなたも私を裏切るのね」
三女に続いて長女までもが自身の敵に回ったと理解したヘレナ様は怒りに顔を歪める。
――って、ちょっと待てよ。
次女のカテリノ様はどこいったんだ?
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