第111話 問答無用
エクリア様がカルロに敗れたことで、とうとう今回の件の黒幕と思われるヘレナ様が登場。
原作ゲームでは存在していたのかどうかさえハッキリとしない、モブ中のモブ――だが、今はラスボス級の威圧感と強力な魔力で俺たちに迫りくる。
「す、凄い魔力だ……」
チート級の剣術でエクリア様を圧倒したカルロでさえ、ヘレナ様の放つ異様なオーラに気圧されていた。原作での実力を考慮すれば、カルロでも十分倒せそうなものだが……今の段階ではその域に達していないのか。
ともかく、この状況はまずい。
なんとかしてこの場をやり過ごそうと思考を巡らせていたその時、突然後方にあった部屋の扉が轟音とともに吹っ飛んだ。
「まさかあなたが黒幕だったとは……」
「っ!? パウリーネさん!?」
やってきたのはロミーナの護衛騎士であるパウリーネさんだった。
――って、待てよ。
ということは……
「アズベル!」
「ロミーナまで!?」
やはり彼女も来ていたか。
「帰りがあまりに遅かったので心配になってあたりを捜し回ったんだけど……まさかお母様がいたなんて」
ロミーナからすれば、俺たち以上に訳が分からないだろうな。
姉であるエクリア様はまだしも、母親のヘレナ様がなぜかいるし、なんだったら俺たちと戦闘状態……すぐに理解できる方がどうかしているってもんだ。
「説明をしてください、お母様!」
「その必要はありません」
ヘレナ様はそう告げて、ゆっくりと右手をかざす。
――まずい!
咄嗟にそう判断した俺は、これまで使用を封印していた魔銃を取り出して引き金に手をかける。
「ア、アズベル様!?」
義理の母親になるヘレナ様へ武器を向ける。
この光景に驚いたカルロはこちらへ駆け寄ろうとするも、ヘレナ様がロミーナへ攻撃魔法を放とうとしているのは分かっていたので踏みとどまった。
カルロ……さすがにいい読みをしている。
俺は攻撃するつもりなんてない。
――ただ、交渉をしたいだけだ。
「やめてください、ヘレナ様」
「そのような魔道具で私にたてつこうと?」
「こいつの威力を侮ってもらっちゃ困ります。俺の使える生産魔法のすべてを注ぎ込んだ自信作ですから……とりあえず、手を下げてください」
もう駆け引きは始まっている。
果たして、ヘレナ様の返答は――
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