第110話 真の黒幕
さすがは主人公というべきか。
カルロはその圧倒的な力でエクリア様の魔法を無効化させてしまった。
「な、なんなの、こいつ!?」
エクリア様はとんでもない伏兵の登場に動揺していた。たぶん、俺が護衛のために連れてきた一般兵くらいの認識だったんじゃないかな。
しかしその実態はこの世界における主人公――やがて世界を平和に導く英雄なのだ。
「まだだ!」
勢いのとまらないカルロは攻勢を緩めずに追撃へと打って出る。
あまりにも予想外だった展開で反応が遅れてしまったエクリア様は、彼の攻撃を止めることができずにそのまま直撃を――食らう直前でなぜかカルロは動きをピタッと止めた。
「ど、どうしたんだ、カルロ!」
「う、動かないんです……」
金縛り状態となって身動きが取れなくなってしまったカルロ。紛れもなく魔法による影響なのだろうが、対峙していたエクリア様は反応が遅れてそんな高等魔法を咄嗟に仕掛けることはできなかったはず。
――とすれば、この場にいるもうひとりがやったのか。
「なんと情けない……たかが一般兵に追い込まれるなんて」
悲しげに呟いたのはエクリア様やロミーナの母親であるヘレナ様だった。
「お、お母様……」
ヘレナ様の言葉を耳にしたエクリア様の表情はみるみる青ざめていく。
よほど怖いのだろうな。
「エクリア……あなたには期待をしていましたが、この程度の相手に後れを取るようでは評価を改める必要がありそうですね」
「お、お待ちください! 私はまだ負けてはおりません!」
……とても親子の会話とは思えないな。
ロミーナも幼い頃からこんなやりとりを母親としていたのか?
エリート志向といえばそうなのかもしれないけど、もっと大切なものがあるだろうに。
「ア、アズベル様……どうしましょうか……」
今度はカルロの方が困惑しているな。
正直、俺もどうしていいのかよく分からなくなってきたが、とにかく学園を覆っている結界魔法にヘレナ様が関与している可能性が極めて高くなった以上、なんとしても解除してもらわなくては。
「ヘレナ様……あなたは――」
「目障りですよ」
会話を成立させる気などさらさらないらしいヘレナ様は俺とカルロに向かって攻撃用の炎魔法を放ってきた。
問答無用ってわけかよ!?
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