第97話 カルロと手合わせ
上級生の鍛錬を見学中、教師の提案によって組まれた俺とカルロの模擬試合。
本来、俺の武器は魔銃なのだが、今回は剣術での勝負となる。
「頑張ってね、アズベル」
「ああ。いいところを見せられるように頑張るよ」
「それも楽しみではあるんだけど、怪我だけはしないようにね?」
「分かっているって」
ロミーナは俺の体を気遣ってくれたが、これに関しては問題ないだろう。
なぜなら、実戦形式の模擬試合では鉄壁の防御魔法をかけられるため、試合中という限られた時間内ではあるが、痛みを感じないのだ。ダメージ自体も残らないのでまさに鍛錬にもってこいの魔法である。
ただ、中には「痛みを伴わない鍛錬では意味がない」と批判している人もいるらしい。
その言い分も理解できるが、時代に合わないのだろうな。
今では昔のように大きな戦争も減った。
世界全体が和平路線に進みつつあるのだ。
まあ、俺みたいに個人的な理由で命を狙われるってケースもあるんだけど、何もしなければそういう事態とは無縁の人生を送れる。
――しかし、俺としては今よりもっと強くなりたいという願望があった。
屋敷を襲撃した魔法使いに立ち向かうって意味もあるんだけど、何よりもロミーナを守れるくらい力をつけたいというのが本音だ。
モリスさんやパウリーネさん、それにイルデさんのような頼れる大人たちが近くにたくさんいる。
それでも、やはりいざとなったら一番近くにいる俺が彼女を守らないと。
何もできない結果が……原作におけるラストの姿だ。
「よし。準備できたら互いに前へ」
教師の掛け声で、俺とカルロは対峙するように向き合って立つ。
「よろしくお願いします、アズベル様」
「こちらこそ」
模擬試合の前に握手を交わすが――その時、俺はハッとなる。
握ったカルロの手はゴツゴツしていた。
皮が厚く、マメも多い。
剣を振り続けてきた何よりの証拠だ。
彼は彼で、自分の人生を変えるためにマドリガル騎士団長のもとで厳しい特訓に明け暮れているのだろう。
手を放し、再び元の位置へ。
「それでは――はじめ!」
試合開始の合図とともに、俺とカルロは互いに剣を構えた。
「まいります!」
先に仕掛けたのはカルロだった。
地面を力強く蹴ると、あっという間に俺との距離を詰める。
なんて瞬発力だ!?
「ぐっ!?」
放たれた一撃をなんとか木剣でさばき、事なきを得る。
それにしても……想像より遥かに強くなっているな、カルロは!
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